私たち『天洋食品工場』は河北省食品輸出入集団公司の傘下で、家畜をお金に変えるお仕事をしております。2000年の生産額は3,000万RMB(約4億5,000万円)を超えました。 いま話題の『天洋食品工場』のウェブサイトを日本語でご紹介してみました。 ま、中国企業のウェブサイトにありがちな、ホームページ製作業者のフォームをとりあえず埋めただけで、あとは放ったらかし....。生産額が2000年のデータのままになっているところをみると、5年くらいは更新していないんでしょう。中国語が専門ではない私がみても、稚拙で怪しげな中国語の文章です。 会社紹介のテキストから読み取れる、主力製品は"肉類加工冷凍食品"ですが、このウェブサイトに掲げられた製品写真は、アイスクリームとお菓子です。きっとホームページ製作業者が手元の画像で"食品"っぽいやつを貼りっ放しにしているのでしょう。 圧巻は、「市場構造(マーケット・ストラクチャー)」のページに載っている"輸入製品"のところ。そもそも"輸入"じゃなくて"輸出"の間違いだと思うのですが、「"輸入国家"アメリカ」の国旗が、こんなんです....。 これって、確かデンマークの国旗じゃなかったでしたっけぇ.....。 日本では、企業ウェブサイトのメンテナンス状態で、その企業の管理体制が見える、などと言われるようですが、中国の多くの企業の管理体制なんて、こんなものなんです....。 この工場は、"河北省"と冠された企業集団傘下にあるようですから、「国有」系企業であるのは確かでしょう。一部日本で報道されているとおり、中央政府とか地方政府(河北省)とかその党委員会とかが関係している企業でしょうから、省レベルの検査で一定の要件が満たされれば、国家品質監督検査検疫総局(中央レベル)による輸出時の権益検査は免除されるのでしょうね。 でも、こういう待遇を受けているのは何もこの『天洋食品工場』だけではありません。たくさんの企業がこうなんです。 日本は食糧の60%以上を輸入に頼らなければならない国家なのです。 件の冷凍餃子も、コストを抑える目的で中国加工にしたのでしょうが、仮に日本で加工したとしても、材料の大部分は中国産になってしまっていたでしょう。 こうした事件に接して私たちは、中国を叩くよりもまず、私たち日本の"食品安全保障体制"を見直すことからはじめるべきだと思います。 でなければ、日本は将来海外市場に頼らざるを得なくなる製造業やサービス業を捨ててでも、食糧自給自足の道を歩み始めなければならないでしょう。外貨が稼げなければ、エネルギーも自給自足しなければなりません。 そもそも、日本の輸入元・販売元はどのような管理をしていたのでしょうか? 日本の著名ブランドをくっつけて、日本の"一流企業"が販売していたわけでしょう。日本の消費者は、中国製品に警戒しつつも、そのブランドを信頼して購入したのではないでしょうか? 冷凍の"日本式焼き餃子"など、一部の日本人向けスーパーを除いて、中国では売られてません。おそらく、商品企画、パッケージデザイン、レシピ、調理仕様書などのすべては、日本側から、委託製造先である『天洋食品工場』に提供されていたでしょう。 製造を委託した日本企業側は、品質管理マニュアルくらいは用意していたかもしれませんが、製造現場における品質管理まで、しっかり行っていたのかは甚だ疑問です。 私が推測するに、お塩かうまみ調味料の代わりにメタミドホスを入れてしまったとか、野菜の洗浄工程をショートカットしたとか、そんな原因だったのでしょう。過失か故意かは別として、中国ではよくある話なのです。気に入らない上司のお茶に雑巾の絞り汁を入れちゃうOLみたいな感覚で、ライバルの飲食物に農薬を混入させることさえ日常的と言えるのです。 こうした事故を防ぐには、現場の管理を徹底するほかありません。 農薬や殺虫剤は調味料とは別に管理する、調理中の工場には持ち込まないようにする、各工程の責任者は1時間ごとに状況をチェックし記憶を残す、材料野菜は仕入れた日ごとにサンプル検査を行う、そうした対応が取れていれば、異物は混入されなかったでしょうし、日本の販売元が工程管理記録を共有していれば、材料付着農薬残留の危険性などを把握することができて、日本の消費者の手に渡る前に未然に不具合を発見できたはずです。中毒者が出て、1ヶ月も知らん振りするようなことは無かったでしょう。 日本の輸入元・販売元は、委託製造先の現場に品質管理責任者を配置していたのでしょうか? 日本ブランドの電機製品の多くも、中国系工場で委託生産されています。 でも私の知る日本メーカーは、委託先の工場に日本から品質管理責任者を常駐させています。いくらマニュアルを徹底させても、中国人マネージャーを教育しても、日本の企業や消費者の要求をみたすような満足のいく管理ができないから、そうしているのです。製造現場で、材料の品質は要件に適しているか、製造工程に不必要なモノが持ち込まれていないか、各工程のチェックリストに不備がないか、24時間体制でチェックしています。販売ブランドの信頼性を守ると言うのは、こういうことでしょう。 こうした品質管理体制をとっていても、不具合が認められたとすれば、批判の矛先は、中国の委託製造元ではなくて、日本メーカーに向きますし、その日本企業も委託製造元の中国の工場のせいなどにはしないでしょう。 その点、私たちの生命の安全により直接関わる食品を提供する日本企業の姿勢は、どうでしょう....。 中国「天洋」ブランドだったら100円でも売れない冷凍餃子を、日本のブランドをつけて、3倍4倍の値段で販売しているのですから、そのくらいの覚悟はしてほしいものです。 食の安全保障を国家間の問題にしようとするマスメディアの動きもありますが、まずは輸入元や日本の販売元の責任を追求し、改善を求めるような世論に導くのが筋ではないかと思います。 BSEでアメリカ産牛肉を輸入禁止にしたのも、安全を確認したと言って輸入再開を決めたのも日本政府(農林水産省と厚生労働省)でした。 日本では長い間、牛丼が食べれなかったわけですが、その牛丼屋さんは、肉牛の誕生から飼育、食肉処理に至るまで、日本企業である自社による厳格な管理体制を敷いていたのです。日本の消費者に安全な牛丼を提供する体制が整っていて、自信を持っていたにもかかわらず、日本政府は杓子定規にアメリカ産牛肉はすべてNGとして、私たちから牛丼を奪ったわけです。 いっぽう、日本政府は政治的な圧力で"全頭検査"の要求を取り下げた挙句、安全が確認されたとして、慌てて輸入再開したのですが、その直後に管理の不備が発覚して、輸入が再禁止されたという、いきさつはご承知のとおりでしょう。 輸入元や販売元が日本の消費者の信頼に応えるように振舞えるのなら、政府がやることは無駄で邪魔なだけです。そもそも、冷凍餃子を一個ずつ検疫検査などできるでしょうか?
by pandanokuni
| 2008-01-31 16:30
| 社会ネタ
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