ワールドカップの決勝リーグにはアジアのチームが一つも進めず、次の大会ではアジアからの出場枠が減らされるのではないか、と心配している方も多いのではないでしょうか?
日本と韓国が開催国だった2002年に4.5に増え、韓国がベスト8、日本も決勝トーナメント進出と面目を保って今回は4.5のままでしたが、次回は3.5、下手したら2.5に減らされてしまうのではないか、と。しかも、オーストラリアなどがアジア連盟に加わることになりますから、今回参加できたサウジ、イラン、韓国、オーストラリア、日本に、中国、イラク、UAEあたりが頑張りそうですから、日本のワールドカップ出場は非常に厳しくなってしまいます。 でも夕べの準々決勝を見ていて、そうした不安がちょっとだけ払拭されました。ゲームの内容ではなく、ピッチの周囲に掲げられたBudweiserの広告バナーを見て、そう感じたのです。ワールドカップのスポンサーのバナー広告は、全試合、同じバナー広告が並んでいるかと思うと、実はビミョーに違います。 例えば、システム・プロバイダー「AVAYA」の広告は、日本戦のときのみ”日本"と言う漢字が加えられて「日本AVAYA」という表現になっていました。この企業、日本のコンシュマーにとって知名度が決して高いとは言えなかったので、敢えて日本戦では"日本"と言う文字を付け加えて、注目度アップを狙ったのでしょう。 コカコーラ社の予選リーグのバナー広告は、「Coca Cola」か「Coca Cola Light」の表示でした。しかも、対戦カードによってビミョーにカラリングやデザインを変えていたようです。赤と白で表現することがお決まりの「Coca Cola」のロゴが、チーム・ユニフォームのカラリングを意識して別な色になっていたゲームもありました。決勝トーナメントの準々決勝までは、スポーツドリンク「POWERADE」のロゴを表示しているようです。 バドワイザーの広告は、予選リーグでは「Bud」を2回重ねるか「Budweiser」の英語表記でしたが、準々決勝では「Bud 百威」の表現になっていました。「百威」はBudweiserの中国語のブランド名です。フランス、ポルトガル、ブラジル、イングランドと中国にはまったく無関係のゲームにも関わらず、中国語のブランド名をバナー広告に用いたというワケです。 つまり、バドワイザーはワールドカップにおいて、中国マーケットでの広告効果を大いに期待していると言うことになります。 ワールドカップのような世界的なスポーツ・イベントは、スポンサー無しでは成り立ちません。スポンサー企業はグローバル・マーケットの中で、広告価値を評価して、スポンサーシップに多くの資金をイベントの運営のために支払います。そして、リージョナル(地域)や国家ごとのブランド戦略と刷り合わせながら、広告の露出を検討します。バドワイザーが中国語ブランドの広告を掲出したことは、ワールドカップがアジアのマーケット、特に中国マーケットに大きく依存しつつある、という象徴と言えるでしょう。 現にヨーロッパのクラブチームは中国や日本を中心としたアジア・マーケットを重視しています。レアル・マドリッドやマンチェスタ-・ユナイテッドは中国や日本でオフシーズンにキャンプを張ったり、エキジビジョン・ゲームを開催したりしています。 もはや、スポーツ・イベントのマーケティングは、アジア、特に中国抜きでは成り立たない状況になりつつあると言えるでしょう。 FIFAもお金を集めなければ、ワールドカップのような大イベントを運営できません。中国や韓国や日本のワールドカップ出場が絶望的な状況となれば、アジアのサッカー熱が冷めてしまうことになるかもしれません。 中国では中央電視台(CCTV)の5チャンネルと2チャンネルでワールドカップ全試合を中継しています。ポータルサイトや新聞などでも連日大きく取り上げていて、中国の若者のサッカー熱は日に日に強くなっています。中国のサッカーに辛口の評価を下しつつも、いつかはワールドカップで活躍してもらいたいと願っているのです。こうした中国のワールドカップ・ブームは、恐らくFIFAも後で糸を引いているに違いないと思います。 FIFAはもはやアジア、特に中国マーケットを無視することはできません。ワールドカップのスポンサーが、中国での視聴率、つまり広告価値を重視しているからです。となると、中国や日本の出場の可能性を小さくするアジア枠の縮小には慎重にならざるを得なくなるでしょう....。 ベスト16に1チームたりとも進出できなかったとしても、巨大マーケットである中国を中心としたアジアでも、ワールドカップへの興味を引き止めるために、アジアの出場枠については寛容にならざるを得ないのではないでしょうか。 バドワイザーの中国語広告を見てしまうと、アジア出場枠をそう簡単に減らせそうにはない、FIFAの事情が伺えてしまいます。 とは言え、FIFAが2010年の大会に出場してもらいたいと考えているのは、日本ではなくて中国チームなのかもしれません....。
by pandanokuni
| 2006-07-02 21:28
| 社会ネタ
|
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