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『中国青年報』を舞台に日本のお役人が大奮闘!!
日本にお住まいの方は何となく、在中国の日本大使館や領事館の人たちが、"チャイナ・スクール"で固められていて、「日中友好、日中友好」という感じで、できるだけ中国側を刺激しないように手をもみもみして、差し障りの無いように毎日を過ごしているんじゃないか、と思われたりしている方も多いのではないでしょうか....

2002年5月に起きた瀋陽総領事館北朝鮮人亡命者駆け込み事件の"帽子を拾ってあげた"映像があまりにも象徴的だったのかもしれません。お国のために頑張っている方々もたくさんいるのですが、大衆映像メディアの影響力たるや恐ろしいものですね。上海総領事館職員自殺事件のときも、『週刊文春』の記事に拠れば、杉本総領事は非公式でこの事件に関係したと見られる中国機関のNO1と2を飛ばしたとされています。日頃仲良くして"関係作り"に励み、手を打つときにはそうした"関係"を巧みに利用したのでしょう。"もみ消し"とお考えの方もいらっしゃるようですが、現地でできる限りの奮闘をしたと捉えても良いのではないでしょうか。
"チャイナ・スクール"だから、在中国日本公館員だから、更には中国にいる日本人だから"売国奴"みたいな決めつけは、当てはまらないと思います。

最近、胡錦濤さん傘下の新聞『中国青年報』の別刷り版とも言える『青年参考』のカヴァーページを飾った日本のお役人がいらっしゃいます、大臣でもないのに、です。4月6日付けの「日本公使が"武器輸出問題"を話すためにやってきた」というタイトルの記事に、どんと大きな井出公使の"毅然とした"顔写真が掲載されました。井出敬二氏は日本大使館広報文化部長で広報担当の公使ですから、メディアのインタビューに答えるのは"当たり前"と言ってしまえばそれまでのことなのですが、定例会見やメディアからの問い合わせに文書で回答するのがお決まりのコースとも言える、日本のお役所系の広報責任者とは一味違って、中国メディアに果敢に立ち向かっている感じです。

ことの始まりは『青年参考』の1月17日付け「日本の軍事支出の真相」と言う記事の中で、日本がアメリカに対して手榴弾などの武器を輸出しているなどと書いたこと。
この記事に対して井出公使は1月19日にさっそく新聞社に出向き、記者と"交流"を行ったようです。その結果、扱いは小さかったものの「日本は猟銃のみを輸出している」という前論撤回の"訂正記事"を勝ち得たのでした。記事の中で井出公使は自衛隊員が海外任務に赴く際に携帯する自衛武器でさえも"輸出"の記録が残るんですよと説明すると、武器輸出規制や税関に対しての知識が乏しい記者はとても理解できないとへんてこな質問を繰り返し、そのまま記事にしちゃったのでした。

とは言え、その後中国の新聞やニュースサイトに転載されるのは、元ネタの「日本がアメリカに対して手榴弾などの武器を輸出している」のほうで、"日本の武器輸出疑惑"はネット上でくすぶり続けていました。きっとそんな状況もあって、井出公使は『青年参考』に再度足を運んだのでしょう。そして、今回はカヴァーページを飾る大きな記事として掲載されたのです。ま、"日本の武器輸出疑惑"についての議論はスルーさせていただきますが....
しかも副産物として、ご本人のプライベートな素顔まで中国の権威あるメディアで紹介されたのです。4月11日付けの「日本公使:中国での生活に精神的プレッシャーは感じません」というタイトルの記事では、本紙とは何度も交流を続けている井出公使の独占インタビューという枕詞付きで、家族や中国での生活についてとともに、非常に微妙な靖国神社の問題や台湾海峡の情勢についても語ってもらったと、和気藹々の雰囲気を醸し出しています。しかも、井出敬二(笑):日本の武器輸出のことで突っ込まれると思っていたら、家族の話ですかぁ...."(笑)"ですよ、中央共青団機関紙が....。そんな導入部分から、記者の質問はお決まりの"靖国神社の問題"や麻生外相の"台湾という国発言問題"へと移っていくのですが、井出公使は記者に逆質問を繰り返すことで記者の"勉強不足"=中国人民の理解不足を露呈させていきます。ちょっと目を通すだけで記者の取材不足がバレバレのインタビュー記事を掲載する勇気も大したもんだと思いますが.....。
ちなみにこの記事のタイトル「日本公使:中国での生活に精神的プレッシャーは感じません」には「"小泉さんの靖国参拝は私的なものだ"と話す」という修飾語付きです。

武器輸出にしても、靖国神社にしても、台湾発言にしても、当の記事を書いただろう記者が議論も続かないくらい勉強不足だったわけで、中国メディアの日本批判なんてこんなものなのですが(日本メディアの中国批判も似たような感じでしょ)、敢えてスルーせずに新聞社に乗り込んで堂々と説明する姿勢は立派だと思います。しかもお堅い新聞が"(笑)"をつけてしまうくらい和やかに。
メディアのインタビュー、特に中国の場合は、ちょっと言い方を間違えると"命取り"になりかねないわけで、事なかれ主義のお役人なら、部下の作った回答書を何度も手直しして差し障りのない文書で対応するのがフツーなのに、積極果敢だと感心しております。『青年参考』は記事になりましたが、記事にならなかった"接触"もたくさんやっているのだと推測します。
ちなみに井出公使はいわゆる"チャイナ・スクール"ではないようですけど、最近こんな本も出されています(あんまり売れちゃうと、商売敵になっちゃうんですけど....^^;)。

外務省や井出公使をヨイショしても、あまり良いことは無さそうですが、中国の(影響力は小さいですが)権威あるメディアで展開された日本政府による"世論工作"とお役人の奮闘を、日本のメディアはきっとスルーしてしまうと思いましたので、当ブログにて紹介させていただいた次第です。
by pandanokuni | 2006-04-13 20:28 | 政治ネタ
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