最近では珍しく、100話突破という快挙を果たしたテレビアニメ『ケロロ軍曹』を見ていると、自分とケロロ軍曹が似たような境遇に思えることがあります。
ケロロ軍曹は銀河のかなたケロン星から"侵略"のためにペコポン(地球)にやってきたのですが、いろんな事情で本隊からペコポンに取り残されてしまい、居候として身を置くことになった日向家の人たちの暖かい心遣いに包まれ、何となくまわりのペコポン(地球)人に気を遣いながら暮らしているのです。とは言え、遠く彼方の"本隊"からは"侵略"をいつも急き立てられ、尚且つ"侵略予算"など"本隊"からの充分なサポートも期待できるわけではなく、プレッシャーに負けそうになりながらも、間が抜けた侵略作戦を遂行していくのですが、日向家の長男冬樹くんの「軍曹、僕たち、ともだちだよね。」という決め言葉によって、侵略行動はいつも頓挫し、ペコポン(地球)人との友好と交流に勤しんでしまう、と言うお話です。 日本の会社の駐在員として北京にやってきている私は、何となく"本隊"から取り残されているという孤立感をかられることがあります。本社からは"任務"の遂行を求められているわけですが、時にはこちらの事情を無視した理不尽な"任務"もあるわけです。中国の状況については、こちらに長く住んでいても理解できないことだってありますから、日本の上司には一晩かけてお話しようが、数百ページのレポートを提出しようが、私自身が把握している範囲の状況すら、うまく理解してもらえないのです。 それなのに、この国の事情をあまり考慮せずに"任務"の遂行を強いてくるケースが多いのです。まして、こちらが必要と思うサポートも満足には得られていません....。 その一方で、こちらの人たちはそんな私の立場に同情的だったりします。日本の事情が分からないからなせる業なのかもしれませんが、本社の無理難題に対して、"理不尽だ"などと慰めてくれる幹部社員がいてくれたりします。 日本に居ると、中国は"とんでもない国"だ、中国人はとんでもない奴だ、みたいな論調をよく目にしますが、私が直接見聞きする限り中国はそれほど"とんでもない国"には思えませんし、私の周りの中国人もそれほど"とんでもない奴"ばかりが多いようには思えないのです。もちろん、日本を含めてどんな国にも"とんでもないこと"はあるはずですし、"とんでもない"人だっていますから、中国にだってそういうこと(人)は当然のことのようにある(いる)のも事実です。 ただ、時として遠き日本の人たちより、ここ北京の人たちのほうが、優しく暖かく感じられることすらあるのも事実です。 そんな自分は時々、戦後日本の自虐史観に支配されながら、ここ北京で暮らしているのかも、と疑わしく思えることがあります。例えば:
誤解を受けないように申し加えますと、私は"知り合いの中国人"から吹っかけられた議論に関しては、小泉さんのことも、教科書のことも、靖国神社のことも、20世紀前半の戦争のことも、逃げることなく自分の意見を述べるようにしていますし、彼らの理不尽な意見に迎合したり妥協するつもりはありません。 でも、日常生活の中で"知り合いとは言えない無い中国人"には、何気に日本人であることを隠したり、"過去"の話題を避けようとしたりしているみたいなのです。なんだかペコポン(地球)人から身を隠すことのできるアンチバリアを展開して"隠密行動"しているケロロ軍曹たちみたいであります(ちなみに、ケロロ軍曹たちは"ボケがえる"みたいな風貌の宇宙人なので、地球人に見つかると解剖されたり標本にされたりするのではと怖れているようです)。 「この国では日本人であることが不利に機能する」という意識が心の奥にあるからでしょう。 それは、この10年の"愛国教育"により中国人の"反日感情"が高まりを見せている中で、日本人として面倒なことにはできるだけ関わらないようにしよう、という消極的な対処療法であるだけではなく、<日本という国家が過去の一時期においてこの国の人々に多大な迷惑をかけたし、未だに充分な償いをしていない>というようないわゆる"自虐史観"が心の奥で作用していることも否定できません。 私自身いわゆる"自虐史観"で物事を語られる人たちには批判的であるはずなのですが、ここ中国で暮らしていると"周辺環境"が"目に見えないプレッシャー"になって意識に働きかけているのでしょう。 これはもはや思想や信念などではなく、ごく簡単に言ってしまえば<周りの人に嫌われたくない>という感情なのかもしれません。もはやケロロ軍曹というより『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジの胸中ですね。. ちっぽけな私人としての私は、知らず知らずのうちに、遠く祖国の同胞より身近な人たちとの関係、道理より感情が先んじてしまうように、なってしまったようです。でも国家の指導者の方々には、感情や利権に捉われることなく、お互いの国益を最大限引き出せるような、道理を重んじた外交を展開して欲しいと願っております。
by pandanokuni
| 2006-03-29 18:00
| その他
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