12月30日のエントリー「外交官に限らず、弱みを握られれば脅され可能性はあるでしょう。」には、特にexblog版にてたくさんのコメントを戴きました。「売国奴」という"名誉"ある称号まで戴いたりしてしまいました。
謙虚に受け止めたいところではありますが、このブログに近い視点で問題を取り上げていらっしゃる「木走日記」には批判的コメントがほとんど届いていないことを考えると、私のほうのブログは"いわゆる"「感情的反中主義者」の方の多くにご拝読いただいているようで、せっかくの機会だと思い反論を書かせていただきたいと思います。 「上海領事館員の自殺」については、「週刊文春」の当該記事を読ませていただきました。私の視点は、記述のすべてが真実かどうかと言うことではなく、メディアの批判がどこに向いているかです。この記事の場合、こうした汚い"色仕掛け"によって外交官を自殺にまで追い込んだ中国当局と、この事件を官邸に報告しなかった当時の日本外務省が批判の対象となっていました。これはこの記事を未読だった12月30日のエントリー時点で私が想像したとおりでした。 批判を免れ同情の対象となった外交官について、「亡くなった方は神様になるから生前の振る舞いについてどうこう言うべきではない」という"日本人的魂"あるいは"美学"に、私も激しく同意する部分がありますから、12月30日のエントリーでは多くを語りませんでした。でも、同情的に報道したにせよ、死者の過去を掘り起こしたのはメディア側ですから、私も"勇気を持って"(ちょっとだけ)批判することにします。 12月30日のエントリーに対しては、既に私自身が下ネタ系で中国当局に"弱み"を握られているのだろう、というコメントまで戴きました。コメントでもご回答しましたが、残念ながらい(いまのところは)大丈夫です。別に私が女の子に興味を持てないHGだからではありません.... 日本の政治家や、官僚や、一部大企業のトップや、"友好団体"の幹部などが、"色仕掛け"による"弱み"を握られてしまっているのは、メディアの報道などで周知の事実だと思いますし、私自身直接知っている事例もあります。でも、そうした環境だからこそ、まずリスクマネージメントを行うのが大事なのではないでしょうか。 下半身の制御は難しいかもしれませんが、仲良くなった女の子に対して、「名刺を渡さない」「ホントの仕事の内容や会社名を教えない」「自宅アパートやホテルの部屋に連れ込まない」などの自己防衛策をとっている日本企業の駐在員はかなりいます。「文春」によると、この外交官は上海のカラオケ店で女の子と知り合っているわけですから、危険度No.1なのです。私などは、カラオケ店の女の子に対して上述の自己防衛策を取っていますが、用心深い方などは"お水系"でない"素人"の女の子に対してまで"自分の素性"を明らかにしません。 もちろん、そんなリスクマネージメントなど御構いナシで、ガンガン飛ばしている方もたくさんいらっしますが.....。 「中国の手口が汚い」と言う報道は、この事件に始まったものではないでしょう。まっとうな企業なら駐在員の「引継ぎ事項」になっています。民間なら"自己責任"で済むかもしれませんから、「中国の汚い手口」が実在することを信じる/信じないは当人の自由と言えば自由ですが、外交官となればそういうわけにもいかないのではないかなぁ、と思ったりします。「文春」によれば、この事件の後で、"暗号システム"をすべて変更しているとのこと。だとすれば、相当な国費が使われたはずです。 もう一点、コメントから気になったことは、日本のメディアに対する過信です。国家統制下の中国のメディアとに比較することによって、日本人が日本のメディアに"安心感"を抱こうとする心配です。 私は何も、中国のメディアが統制されていない、などと思っていません。多くの部分は国家によって統制されています。でも大切なのは、中国のメディアに関わる人たちも、受け手側も、中国以外の人たちも、このことを前提としていると言う点です。 特に中国に居て感じるのは、この前提が"批判"や"諦め"のみに結びついているだけでは無い点です。中国でメディアに関わる人たちの一部は、"統制”の中から差し障り無いようにほんのちょっとでも逸脱しようと試みています。もちろん、"当局の力"が行使されそうになると引っ込んだりしますが。また、中国の受け手側の多くも、"統制"の中から出てきた情報だと察すれば、"真に受けたり"しません。ネット接続環境を持ち、語学に秀でていれば、様々な手段で別の切り口の情報を収集できるようにもなりましたし。 一方、日本のメディアには、国家による統制が無いことになっています。ただ数的に影響力の大きい大衆メディア(テレビや新聞、部数の多い雑誌など)は、"商業メディア"です。"市場原則"に従わざるを得ないのです。つまり、少なくとも”読者(視聴者)"に統制されます。そのほかにも、いくつかの"フィルター"が存在します。まず、企業のフィルター。私もメディア業界の端くれに居ますから、当事者として振舞うこともあります。商業メディアの広告主でもある大企業の不祥事は、核心部分が隠匿されたり歪曲されたりすることがあります。次は、政治家・お役所のフィルター。安部さんや中川さんがNHKを呼びつけた話が有名ですが、よくある話なのです。さらに、警察のフィルター。事件メディアの主たる情報源は警察になってしまっちゃいましたから、情報源の機嫌を損なうような報道は差し控えたりします。なお、これらのフィルターは、企業や政治家や警察からメディアに対して、"直接的な圧力"がかかることによって"発動"するわけではないのです。"圧力"が加わるケースはむしろ稀で、メディアのほうが"自主規制"するケースのほうがほとんどでしょう。ですから"統制"というよりは"フィルター"というほうが近いと思っています。 森達也さんの映画「A」は、オウム信者が"別件微罪逮捕"される瞬間をカメラで捉えました。刑事のほうがオウム信者をドツイて、その反動で故意に倒れたのに、オウム信者側の「公務執行妨害」として、その場で手錠をかけたのです。オウム報道が盛り上がっていた1995年の話ですから、森さんのカメラのほかにも、周りにテレビ局のカメラや新聞記者が大勢取り囲んでいました。でも大衆メディアは積極的には報道しなかったのです、特にこのオウム信者が公判で"無罪"となったことなどを。 ”読者(視聴者)"に統制される大衆メディアが、情報源である警察のフィルターを通した編集により、"ボツ"にしてしまう好例ではないでしょうか。 「スパイ防止法」を成立させよ、と言うコメントも戴きましたが、大衆メディアで報道されていないことが、一層増えてしまいますよ、きっとこの映画とかNGでしょ。 統制が無いはずなのに"チキン"になっている日本のメディアのほうが、私にとっては"憂国"に思えてしまうのです。 年頭のエントリーの最後に申しあげたいのは、(これは森達也さんもおっしゃっていることなのですが)、"軸"の置き方についてです。 私は自分自身では「親中派」などと思っていません。意識しないまま、「知中派」を目指しているのかも知れませんが.... 私は日本人として、日本が世界に自慢できる立派な国家であって欲しい、と思っています。そういう言い方をするヤツは20年くらい前まで"右側"扱いされていたと思います。決して「売国奴」なんて言われたりしなかったと思います。そうした意味で、全体としての日本の"軸"は、排他的愛国主義のほうに移動しているように思えるのです。もちろんこの"軸"の移動は、日本のメディアによってもたらされたのではなく、受け手側の大勢としてもたらされたのだと思いますが.... 日本が日本だけで完結するのなら、そういう方向もあるのかもしれません。でも、良くも悪くもグローバル化が進み、またエネルギーも食糧も日本国内のみでは確保できないこの先50年くらいの状況において、世界中のできるだけ多くの国々と仲良くしていくことこそ、日本の国益に叶うと思っています。そして中国との関係も大切でしょう。 中国を毛嫌いするのは簡単ですし、私もかつてはその一人でした。ただ、日本が正義で中国が悪党のような二項対立の中でモノゴトを見ていくのは、生産的では無いと思います。中国を"敵"とするならするで、もっともっと理解を進めてキチンとした"対策"を用意しなければ、20世紀前半の日本と同じ失敗を繰り返すことになってしまうのではないでしょうか。理解しようとすることと受け容れることは、私の中では決してイコールではありません。 中国を理解しようとすることといまの日本を批判することをことしも続けていこうと思っています。私の"母国"である愛すべき日本のために....
by pandanokuni
| 2006-01-02 14:56
| 社会ネタ
|
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