週一回の出張マッサージは自分へのご褒美みたいなもの。
2時間のマッサージの間に、北京に出稼ぎに来ているフツーの女の子と会話も楽しめます。特別サービス付きのマッサージ嬢は別として、フツーのマッサージ店で稼いでいる女の子は、田舎の中学か高校を卒業して北京に出稼ぎにやってきて、家族のために仕送りをしているような女の子が多く、それでいて2年も北京に住んでいれば、世の中のこともそれなりに理解しています。ウチの会社の女の子やビジネスで知り合うような人たちは、中国全体としてみれば"エリートに属してしまうので、"フツーの中国"を理解する意味では、マッサージの女の子との会話のほうが近いのではないかなぁ、と思ったりしています。 その日初めてウチに来た、ちょっとエキゾティックな雰囲気の女の子でした。 最初はうつぶせになって、肩や背中や腰をマッサージしてもらいます。初めての女の子に対する話題はきまって出身地からです。 「田舎はどこ?」 「チベット」 「珍しいね(ここのマッサージ店には山西省や四川省出身の女の子が多いのです)、行ったことがあるよ、とてもいいところだね。チベットのどこ?」 「チャンドゥオです、(四川省の成都って聞こえたのですが、後で調べたら「昌都」と言う地名がチベットにありました)ラサまではバスで1日くらいの距離です」 彼女は北京に来て約1年、このマッサージ店で勤め始めて2ヶ月、その前は仲介不動産チェーンで営業職をしていたそうです。いまは午前中、コンピュータの専門学校に通って、午後から深夜2時まで働いているとのこと。春節には一時帰郷したいと考えているそうで、北京から成都までは列車で、成都から昌都まではバスを利用する予定だそうです。丸三日の旅程になるとのこと。 私は数年前旅行したチベットの話、例えば高山病で苦しんだことなどをノー天気に話しました。 「昌都は海抜2,600mくらいだから、きっと高山病にはならないですよ。冬は北京なんかよりずっと寒いし、雪も降るから、いまの北京は全然平気....」 1時間ほどして、今度は仰向けになり頭部マッサージをしてもらうことになります。ここで彼女の顔をまじまじと見ることになるのですが、やはりエキゾチックでした。 「漢族なの?」と聞くと、「チベット族です」との答え。チベット族は中国の少数民族の一つですが、少数とは言え540万人はいると言われています。でも、北京でお目にかかるチャンスはあまりありません。私は引き続きノー天気に次の会話のネタを探っていました。チベット族は一生に2度しかお風呂に入らない(シャワーを浴びない)と聞いたことがありましたので、そのあたりの話を振ってやろうかと。ところが.... 「毛沢東....好きなんですか?」 それまでにこやかだった彼女の表情が一瞬曇ったような気がしました。私はパジャマ代わりに人民服姿のレトロな毛沢東さんがプリントされたTシャツを着ていたのです。仰向けになって、毛沢東さんの横顔が彼女の目に入ったのです。 まさか....と思いつつも、私は一瞬言葉を失ってしまいました。少し間があって、 「ファッション、ファッション。外国人は中国の有名人のTシャツがカッコイイと思うんだよ。」と私は答えました。 会話が途切れてしまいました。ちょうど瞼の辺りのマッサージに入ったので、私は目を閉じて別の話題を探ることにしました。 「毛沢東は好きではない。」 彼女のほうから口を開きました。私もとっさに「私も好きじゃない」と返してしまいました。 「毛沢東は、いやその部下のワン・ジェン(王震のことでしょうか?)は、いやその部下のジェン・ユー (こう聞こえました。チェン・ユン=陳雲のことでしょうか?)は、私たちの民族をたくさん殺したんです。」と彼女。 「知っている。」と私。 「どうして知っているの?」と彼女。 「中国国内ではあまり知らされていないけど、外国では知らされているから。」 それから彼女は堰を切ったように話し始めました。共産党がかつてチベットで行ってきた行為は、彼女自身は直接知らないけれども、親や親戚から教えられていること。北京では友達であってもその話はできないこと。チベット仏教とダライラマを信仰していること。共産党がダライラマ14世を追放してしまったこと。いまは「統一」(チベットが中国の一部になること)されたほうが、良いと思っていること。ダライラマ14世には早くチベットに戻ってきて欲しいと願っていること.... 私は、ダライラマ14世の説教を聞くためにインドのダラムサラへ行った友人がいること、その友人によればダライラマ14世の説教は英語で行われ世界中から信者や支持者が集まっていること、最近アメリカを訪ねてブッシュ大統領と会談したこと、私も一応仏教徒であること、などを話しました。 彼女は、日本とアメリカは仲が良いということ、中国と日本は早く良い関係になってほしいと思っていること、日本が中国で過去に行ってきた行為を謝罪しないのは、中国に多額の賠償を求められるのを避けるためだろうと思っていること、などを話しました。 ちょっと私の認識と違うところもありましたが、話をまとめるように発した彼女の言葉には完全に同意しました。 「戦争は嫌いです。世界中の人たちが、みんな友達だと問題が無いはずです。」
by pandanokuni
| 2005-12-07 01:29
| 社会ネタ
|
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