なぜ人を殺してはいけないのか?
たしか「よのなかのルール」という本で宮台真司さんが書いていたと思うのですが、人類の歴史上そんなきまりは存在していなかったらしいです。 むしろ人類には「あなたの敵は殺さなければならない」「あなたの味方は殺してはいけない」と言う二つの大きな原則があった、と言うお話は、非常に明確で真実を突いているように思えました。 歴史上戦争においては、敵を殺すことが"正義"でした。人類のDNAには"人を殺してはいけない"という先天情報が組み込まれてはおらず、一般的な動物本能である<敵を殺すこと=必要>という情報が残されているのでしょう。<味方を殺すこと=NG>は、後天的な社会史の中で浸透してきた"種保存"のための知恵なのかもしれません。 ところが、「戦争にはルールがある」と言われます。つまり古代国家勢力が隆盛した以降は、「あなたの敵は"ルール"を守りつつ殺さなければならない」ということに変わっていきました。 現代においては、「国際法に準じた戦闘行為における殺人はOK。」「法治国家による死刑はOK。」という具合です。 果たしてこれは"人類の進歩"と言えるのでしょうか。 つまり、テロは「あなたの敵は殺さなければならない」と言う原則に基づいているのでしょうが、「"ルール”を守りつつ」と言う部分に違反しているということになるので、NGになります。 テロリストを見つけ出してきて、司法の裁きにより死刑にするのは、「あなたの敵は殺さなければならない」しかも「"ルール"を守りつつ」のどちらにも適合していますから、OKになります。 ロンドンの同時多発テロには多くの方々が強い憤りを感じていると思います。でもほとんどの人は「あなたの敵は"ルール"を守りつつ殺さなければならない」という規則に反した"テロ行為"だから、そう感じているのではなく、単純な意味で「人が人を殺したから(傷つけたから)」悲しく感じたり、憤りをおぼえたりしているのではないでしょうか。 主要国の指導者たちが一堂に会して「テロ行為は決して許されるものではない」と述べているとき、「こちら側は"ルール"をきちんと守って敵を殺してやるぞぉ」と聞こえてきませんか。テロに憤りを感じている多くの人たちは、そのことを望んではいないと思います。 7月7日はいわゆる「盧溝橋事件」が勃発した日です。対日戦勝60年を目前に中国では、日中戦争の話題が盛り上がってきました。日本でもそうした中国側の"言い分"に反対する話題が盛り上がっていくでしょう。 日中戦争の発端となったこの「盧溝橋事件」のいきさつについても然り。そして「南京事件」、犠牲者の数とか国際法違反とか。さらには「通州事件」。大きな争点は"事実認識"ではありますが、議論の背景には「"ルール"を守った」殺人かそうじゃないか、と言う問題が付き纏っていると思います。 "人類の進歩"により新たに付け加えられた項目「あなたの敵を殺すときには、きちんと"ルール"を守って」が如実に"成果"をあげたのは「東京裁判(極東国際軍事裁判)」ではないでしょうか。"ルール"を守らなかったから「悪者」になってしまい、"ルール"に基づいて殺された人たちがいました。 でもその"ルール"って絶対的な真理なのでしょうか? いまだにシコリが残っているのは、この裁判の裁く側と裁かれる側の関係の"特殊性"とともに、殺人のルールには権力による"恣意性"が介在するからではないでしょうか。 テロのニュースに接して悲しくなるのは、それが殺人行為だからでしょう。テロリストや彼らを支援する国家に対して、米英などが"ルール"をまもった殺人行為(報復攻撃)をやっているというニュースに接しても、悲しく思う人がきっとたくさんいるのではないでしょうか。 つまり"ルール"を守ろうが、守るまいが、「人を殺す(傷つける)」ことはNGだと思っている人たちのほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。ですから、"人類のきまり"を更に進化させるべきでしょう。 「あなたの敵も殺してはいけない」 でも、"敵"を排除すること自体、人類の本能のような気がします。だとすれば、"敵"をつくらない方向に進化していかなければならないのでしょう。 お互いに理解し合い、尊重し合えば、「殺さなければならない"敵"」はいなくなって行くのではないでしょうか。或いは全人類共通の"敵"が現実的なものになって初めて「人類みな"味方"」になるのでしょうか。
by pandanokuni
| 2005-07-08 17:38
| 社会ネタ
|
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