イギリスのBBCが、予期せぬ悲惨な映像がオンエアされないように、ニュースの生中継などの時間を遅らせて放送する方針を明らかにしたそうです(asahi.com)。ロシア北オセチア共和国で起きた学校占拠事件の生中継では、逃げ惑う子どもたちの悲惨な姿だけではなく、上半身裸の女の子の映像まで流れてしまい、ネット上で不謹慎な話題を撒き散らしていました。そんな反省もあって、現場からの生中継映像を編集デスクがチェックしてからオンエアすることにしたのでしょう。
ディジタル技術が進歩して、こうした生中継の"ディレイ"放送もごく簡単な操作で行えるようになりました。松井さんの打席に急な来客があっても、ライブ感覚で見れるテレビと同じで、ハードディスクに記憶しつつ再生すれば良いだけの話です。 "生"で入ってくる映像を編集者がチェックして、5秒なり10秒なりのタイムラグを置いて再生、つまりオンエアする。問題になりそうな映像が入ってきたら、あらかじめ用意しておいた別の映像かスタジオのカメラに切り替える。こうした作業により"予期せぬ悲惨な映像"のオンエアを防ぐことができるわけです。 でもこれを"生中継と"称して、画面左上に"Live"などと表示するのは良くないでしょう。 BBCは「"予期せぬ悲惨な映像"がオンエアされないため」とおっしゃっていますが、この手法は様々な目的で利用することが可能です。例えば、予期せぬ発言がオンエアされないためとか、政権側が国民に見せたくない映像をカットするためとか。即ち「検閲」です。 録画映像だと分かっていれば、賢い視聴者は、そこには編集権が存在し、編集者の"意図"が介入していることを前提に見ることもできるでしょう。でも生中継だと思い込んでしまうと、より客観的で真実に見えてしまうはずです。もちろん生中継とは言っても、カメラのアングルによって伝わる情報は大きく違ってきますが.... こちら中国では"生中継"のテレビ番組が以前より増えました。スポーツ中継や大型コンサート、更に政府関連のプレスコンファレンスなど、生中継(直播)と称して放送されています。でも実際は、スタジオからのニュース番組などを除き、ほとんどが"ディレイ"による中継放送です。 いちばん分かりやすいのがサッカーの国際試合。アジアカップのときも、ワールドカップアジア最終予選のときも、ほぼ全試合をCCTVが"生中継"していました。日本戦は、NHKのBSでもCCTVでも同時に中継されている場合があります(NHK BSの受信は違法性が高いのですが)。NHKのBSではキックオフされたのに、CCTVにザッピングしてみるとまだ試合が始まっていないようなことがしばしばあります。"ディレイ"の時間はまちまちで、5秒から40秒くらいが多いようです。オリンピックの中継もこんなわけですから、中国チームの金メダル獲得の瞬間を中国の視聴者は30秒ほど遅れて知ることになります...でも、見ている人はこの映像が"生中継"だと思い込んでいるのです(NHKのBSにしても、試合会場からの衛星伝送、中継基地からの衛星伝送などにより、1秒くらいは遅れて届いているのですが)。 最近、政府関連の"重要な"プレスコンファレンス(記者会見)がテレビで"生中継"されることが増えていますが、これも"ディレイ"で放送されています。3年前SARS(新型肺炎)が流行していた際、北京市政府は定期的にプレスコンファレンスを開きテレビで"生中継"していました。こうした会見はSINAやSOHUなどのポータルサイトでもテキスト・レポートにより"生中継"されています。会場にノートPCを持ち込み、発言の内容をテキストにしてそのままサイトにアップリンクしているわけです。私はポータルサイトとテレビの"生中継"を同時に見ていたのですが、ポータルサイトのほうが先に"質問記者"の名前を表示していたことがありました。"生中継"のテレビ映像ではその前の記者の質疑が続いていました。多分1分以上"ディレイ"して放送していたのでしょう。 昨日は中国証券管理委員会の尚主席のプレスコンファレンスをCCTV-4が"生中継"していましたが、あれもきっと"ディレイ"でしょう。旧正月の大晦日の夜、日本で言うと「紅白歌合戦」みたいな番組をCCTVが生放送するのですが、あれも多分"ディレイ"のような気がしてなりません。新年のカウントダウンがあったような気がしますが、うまく時間調整しているのかもしれません。 中国の"生中継”のほとんどは"ディレイ"になっているのに、画面の左上隅には"生中継"を示す「現場直播」というテロップが誇らしげに表示されています。"生中継"であっても、当局が"見せたくない"映像を放送しなくて済むシステムになっているのです。
by pandanokuni
| 2005-06-28 12:30
| 社会ネタ
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