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中国で報道された町村発言の内容と日中双方の"落とし所"。
<在中国の日本政府関連施設への破壊行為について謝罪と賠償を求めた町村さんに対して、中国の外相・李さんはそれに応じなかった。中国では町村さんの反省と謝罪が報道された。>というのが、4月17日の日中外相会議の日本での捉えられ方の大勢ではないでしょうか(中国情報局)。
まず中国での報道のベースとなる新華社の中国政府当局お墨付き記事のを全文引用してみます(日本語としてはぎこちないかもしれませんが、できるだけ直訳にしています)。


日中外相会談 双方は意見の相違を対話を通じて解決することに同意した
新華ネット4月17日電。17日夜、李肇星外相と町村外相が会談を行った。
李外相は、<中国政府と人民は日中友好関係の発展を一貫して高度に重視している。双方は「歴史を鑑とし未来に向かう」という精神で、両国間の3つの政治文書に照らし合わせ、平和共存、是大寒の友好、互いの利益につながる協力、共同発展を希望している。これは世界平和と安定、発展に利するものでもある。>と述べた。
李外相は更に、<日中関係の改善と発展には、まず正確に歴史を認識することが必要である。侵略の歴史の承諾を正視し反省し、具体的な行動で実行し、中国人民の感情を再び傷つけることが無いように、これらに関わる問題の根本的な改善処理を希望する。>とも指摘した。
李外相は、<台湾問題に関わることは中国の核心的利益であり13億中国人民の民族感情である。一つの中国の原則を堅持することは日中関係の政治的基礎である。中国としては、日本がこれを承諾し忠実に守り、中国の主権に関する件を損害しないように、強く要求した.>と述べた。
町村外相は、<日本政府としても「歴史を鑑とし未来に向かう」という精神の両国関係の大局から日中友好が発展することを願っている。温家宝総理が最近「両会」(全人代と政商会議)の記者会見で日中関係発展のために提出した「三つの原則と「三つの提案」を日本としても高く評価しており、中国側とともに努力し、両国関係の改善と発展を推し進められるように願っている。>と表明した。
町村外相は、<日本は近代歴史において、中国に侵略したことで中国人民に巨大な傷害をもたらした。これに対しひどく残念に思い、再び深い反省とお詫びの気持ちを表わす。日本は歴史の教訓をしっかりと汲み取るように願っており、平和的発展の道を歩み続けている。>と表明し、台湾問題に関して町村氏は、<日本は一つの中国と言う原則を堅持している。「二つの中国」「一つの中国と一つの台湾」を支持していない。「台湾の独立」を支持していない。>と重ねて述べた。
双方は、日中関係がどちらにとっても十分に重要であるとの認識で一致した。双方は、長期戦略から両国関係を高度に認識し把握していくことで、世界の平和と発展に力を合わせること、互いに威嚇しないこと、意見の相違は対話を通じて解決すること、共同の利益を積極的に追求し拡大していくこと、そして各レベルでのまた個人領域での交流と協力を更に推し進めることで、同意した。
李肇星はまた、日本政府が日本にある中国の政府機関と中国公民の安全を確保するために友好な手段を採用するように、厳正に要求した。
このほかにも双方は、両国が関心を持つ国際と地域問題について意見を交換した。



中国ではこの記事を転載・引用する形で、各メディアが伝え始めています。
なお、この記事で出てきた「三つの原則と「三つの提案」は、昨日のポストでも触れましたが、政権中枢の対日強硬派が文句をつけそうな内容です。ポイントをお伝えしますと:


三つの原則(温家宝首相:2005年3月14日)
(1)「歴史を鑑にして未来に向かう」
(2)一つの中国の原則を堅持する
(3)特に経済と貿易の分野での協力を深め共同で発展する
三つの提案
(1)高いレベルでの相互訪問を行う
(2)それぞれの外交部門が共同で日中友好の戦略的研究に着手する
(3)歴史に残された問題を妥当(*)に処理する
(新華ネットより)

*中国語では「妥善」。この言葉には、<すべて思い通りとは行かないが適切といえる>というニュアンスがあるので、中国側のある程度の譲歩に含みを持たせた表現になっています。


中国政府当局の意図を勝手に推測すると、<日本の外務大臣が、歴史問題に関して詫びを入れ、1972年以来の原則を守ると言ってきている。人民の皆さんの熱い反日活動のお陰でもあるから、これ以上激しく日本をいじめるのは止めてあげない?>という方向なのでしょうか。
ちなみに、新華社が伝える町村さんの発言は、95年の「村山談話」に沿った内容になっていると思います。


村山談話(抜粋・1995年8月15日)
わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。
(全文)


正式な文書になっているわけでなく、このことを"やり玉"に挙げる中国の方もいらっしゃるようですが、政府中枢としてはこの談話の則った行動を取ってもらえれば、いまのところ、それ以上踏み込むことは無い、という方針であるように思えます。
ちなみに、小泉さんはかつて村山談話よりもさらに"踏み込んだ"発言をしたことがあると言われています。「中国人民への"侵略"」と言う言葉です。


小泉談話(抜粋・2001年10月8日・北京市郊外盧溝橋にある抗日戦争紀念館参観後)
私は侵略を受け犠牲になられた中国人民に心からのお詫びと哀悼の意を感じ、そうした気持ちを胸に抱きつつここの数多くの展示物を参観してまいりました。
(在中国日本大使館の中国語ホームページより日本語訳。日本語のオリジナル発言内容は見つかりませんでした。)
4月19日追記:大使館発行の「日中関係重要文献集」を入手し、その中に日本語バージョンがありましたので、"お墨付き"表現を追記しておきましょう。
侵略によって犠牲になった中国の人々に対し心からのお詫びと哀悼の気持ちをもって、いろいろな展示を見させていただきました。


なお、大使館がHPで公表している中国語の文章は、"侵略"の主語に当たるものがありません。

話がそれましたが、多くの皆さんは「中国側の謝罪や賠償はどうなってんだ」「そっちのほうが先じゃないか」と更に怒りが増しているのではないでしょうか。私個人も同感なのですが、いまはちょっと無理のような気がします。中国の外務次官・武大偉さんがきょう(4月18日)、外国人記者団に「日本が先に謝罪すべき」と言明したそうです(Sankei Web)。中国政府当局が国内と国際的立場を維持するために、必要な条件ということで一致しているのではないでしょうか。
1999年NATO軍(アメリカ)によるベオグラードの中国大使館の誤爆事件で、北京のアメリカ大使館は反米デモ隊にかなりの仕打ちを受けています。このときはアメリカが損害賠償を求め、中国は拒否する姿勢をとり続けましたが、2年後には秘かに(中国人民にはあまり分からないようにして)賠償金を支払っています。もちろんその前には、その原因となった誤爆に対して、アメリカが謝罪し中国が支払うことになる賠償金の10倍くらいの賠償金を支払っているのですが。
ベオグラード誤爆事件のときとは事情が大きく違いますが、まず根本原因について問題を解決し、それによって発生した事象について解決を図る、というのが中国の方針なのでしょう。4月16日の"上海暴動"に、中国の政権中枢もきっと驚いてしまい対日穏健派が勢力を盛り返してきたのではないでしょうか。4月22日の小泉さんと胡錦濤さんの会談がどうなるかが当面の焦点になるでしょう。
by pandanokuni | 2005-04-18 17:51 | [実録]05年4月反日デモ
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