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私としては"想定外"だった「上海暴動」をどう捉えたらよいのでしょう。
私は北京に居ますから昨日(4月16日)の上海での出来事を直接目撃したわけではありません。ただ、日本の報道、上海在住の方のブログや知人からの目撃情報などから判断すると、先週(4月9日)北京で起こったことより、一層深刻に感じました。複数の日本車が襲撃を受けひっくり返されたり、日本料理店内部に暴徒の一部が侵入し、お店の設備まで破壊したり、日本に関連していると思われてるレストランやコンビニの看板や窓ガラスが相当数破壊された、或いはパトカーに逃げ込んだ日本人が数百人の中国人に囲まれ、尚且つそのパトカーへの破壊行為も行われた、などという顛末は、もはや「デモ」「集会」の範疇を越え、「暴動」或いは「騒乱」と呼ぶに相応しい出来事だったのではないでしょうか。
もちろん、このような暴動状態になったのは上海市のごく一部、日本人が多く居住するエリアに近い日本関係のレストランやお店が多い地域に限られていたようですが。

実は私は、この週末、北京はもちろん上海でも、暴力や破壊行為を伴う反日行動は起こらないのではないか、と想定していました。

  • 4月13日上海市政府の報道官が外国記者とブリーフィングの中で、「デモや集会には申請が必要で、上海市として現時点では書面による申請を受け取っていない」と明言したこと(NIKKEI NET)。

  • 4月14日以降、上海市民に当局がケータイメールまで使って、そのこと(デモや集会には申請が必要)を周知させていたこと。

  • 北京に住む中国の知人の話

  • そして何よりも、上海及びその周辺エリアの経済は日本との結びつきが他の地域より強く、ビジネスが政治に優先する地域柄だという思い込み。

などが、主たる根拠だったのですが、上海での出来事は私の想定を遥かに越えるものでした。
現時点で私は上海の出来事は、大きく分ければ政権中枢部の"足並みの乱れ"と北京人と上海人の"ライバル意識"が招いた結果だったのではいか、と疑っています。
政権内部の"権力闘争"については既に多くの方が指摘されていますから、見識の浅い私としては詳述を避けますが、一つだけ温家宝さんの発言の変化について述べたいと思います。3月14日「全人代」閉会時の記者会見で温さんは「日中関係は、最も重要な二カ国関係だ」と両国関係の重要性を強調し、日中関係改善のための道標を示しています(もちろん、歴史問題のことも強調)SEARCHINA。ところが北京で反日デモがあった4月9日には、スリランカの津波被災者支援のことで小泉さんを名指しで揶揄したといいます(Y! News)。さらに、4月13日には対日デモについての温さんの発言を人民日報(ウェブ版)が初めて取り上げましたが、見出しは「日本当局は深く反省を」になっていて、3月14日の発言の流れを汲むものの、かなりタカ派っぽくなってしまった感じがします。この間、北京でのデモ発生直後の外交部(中国外務省)の次官クラス喬宗淮さんの「お見舞いと遺憾の意」表明と言う比較的穏健な態度から、4月10日以降の外交部スポークスマンの「背景に中国の責任は無い」と言う強硬な発言へと、次第に硬化したように思えます。
対日強硬派と穏健派による政権内部の"足並みの乱れ"は容易に想像がつきます。胡錦濤さんと温家宝さんはほとんど"一枚岩"に見えなくも無いのですが、やはり江沢民さんの"上海閥"の影が気になるところです。中枢には曽慶紅さん(国家副主席)くらいしかいなくなったのですが、軍部を中心にまだまだ影響力があるのではないでしょうか。

一方、第2点の北京人と上海人の"ライバル意識"とは、「上海なんて○○○」と蔑む北京人と「北京に負けるわけに行かない」という上海人の心理ということです。"上海暴動"が起こる前に私の北京の知人(出身は遼寧省だが大学時代から10数年北京に居る)は、「"拝金主義"の上海人が"金蔓"の日本に刃を向けるはずが無い」と言いました。内心キミだって同類項じゃないかと思いつつ、私は妙に納得させられたのです。ところが、生粋の上海人の知人に上海での出来事について尋ねたところ、「北京には負けられないからね」という言葉が出てきました(彼はデモには参加しなかったとのことですが)。この言葉にも私は妙に納得してしまいました。
<ライバル北京で"愛国主義"的運動が行われた、北京の奴らは経済優先の上海人にはこんなことできないだろうとバカにしている、経済発展で北京に差をつけるだけでなく、"愛国心"でも北京に差をつけてやろうじゃないか....>不謹慎な話かもしれませんが、一部の上海人の意識下にはこうした気持ちがあったのではないか、と思われてなりません。
こうした意識が上海市政府や警備当局にも生じていた可能性も否定できないと思います。上海人と北京人を"ライバル意識"を上海閥"残留勢力vs”共青団派"現中枢部、すなわち"強硬派"と"穏健派"に重ねてみると、自分なりに納得してしまう感じがしてしまうのです。

ただ、私が見聞きした範囲での"警備方針"は、北京と上海で大きな修正がなされたとは思いません。一応デモ隊の進路を塞ぐ、突破されたら先導する、大使館施設内への侵入は阻止する、大使館施設への物の投げ込みは無視する、と言う感じだったのではないでしょうか。レストランや商店への破壊行為に関しての対応方針は想定されておらず、現場の警察官の判断に委ねられていたのかもしれないと思います。中国の警察官や武装警察官は上司からの具体的な指示が無い限り、現場の判断で能動的に対応するということは無いと思われます。

外務大臣の李肇星さんは、4月13日の温さんと同じ内容の発言をしている様子です。李さん自身は知米家の風見鶏のような感じですから、現時点では"強硬派"が優勢な状況で続いていると考えてもよろしいのではないでしょうか。
by pandanokuni | 2005-04-17 22:22 | [実録]05年4月反日デモ
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