私のマンションでは、NHKのBS-1、BS-2、BSハイビジョンとNHKワールド・プレミアの4つの日本のテレビ放送が視聴できます。日本人居住者の多いマンションでは、WOWWOWやBSフジ、日テレなども視聴できたりします。
でも中国政府が正式に受信を許可している日本のテレビ放送は、NHKワールドとNHKワールド・プレミアの2つだけです。それ以外の日本のチャンネルの受信は、本来違法状態なのです。以前住んでいたマンションでは、WOWWOWも視聴できましたが、マンションの管理者からときどき「諸事情により1週間ほど視聴できません」みたいな通知が届き、視聴できなくなる時期がありました。恐らく当局がそのマンションの海外衛星放送の受信状況をチェックする時期だったのでしょう。当時WOWWOWは深夜にちょっとエッチっぽい映画を放送していましたから、中国当局のチェックが特に厳しかったのではないかと勝手に推測したりしました。 「反国家分裂法」のニュースが報道されていたこの時期、NHKプレミアムのブラックアウトが多くなりました。全人代のニュース映像が流れている間は平気なのですが、「台湾の反応」みたいな感じで、陳水篇さんの発言や100万人規模の反対集会の話題に入ると突然ブラックアウトします。そして次のニュースに話題が移ると意外とスグ復活します。 ブラックアウトしていたときのニュースの内容がなぜ分るのかというと、正式許可を受けていないNHKのBS-1はブラックアウトしないからです。NHKプレミアムはBS-1の毎正時のニュースをパラレルで放送しています。プレミアムのほうは、複数の放送衛星を経由して受信されるのと中国当局の検閲対象になっているので、若干のタイムラグがありますが、ほぼ同時に放送されています。プレミアムは中国当局が正式に許可している海外放送ですから検閲を受けますが、BS-1のほうは正式な許可を得ていないので検閲されずにそのまま受信できるのです。 プレミアムのNHKニュースがブラックアウトした瞬間、BS-1にザッピングするとどんな内容のニュースが検閲を受けたのかが分ってしまうわけです。 当然のことながら、正式に認可を受けていない海外放送は 検閲対象外というわけです。もちろん、BS-1やBS-2を視聴できるのは外国人が多く住むマンションくらいだから、野放しにしているのでしょうが、北京では直径30センチほどのパラボナとチューナーがあれば受信できますし、そうした受信セットは北京で安く入手できるので、個人的に受信している中国人もいます。やはり中国にもパラボナ探索隊がいるそうで、目立たないところに設置しないと没収されてしまうそうですが。 ちなみにインターネットの場合、手段そのものが合法的にに認められているので、世界中のサイトすべてが検閲対象であると言えます。最新のIT技術を駆使して検閲しているらしく、最近は”腐敗"を表すネット上の隠語となっている"FB"という2文字まで検閲キーワードに指定されてしまったようです。 ところで、NHKプレミアムがブラックアウトするたびに、どこでどんな人がスイッチングしているんだろう、と想像してしまいます。 2~3年前は結構いい加減な感じがしました。天安門事件の映像が15秒ほど野放しで流れてしまってから、ブスンとブラックアウトして、ずうっとブラックアウトのまま。楽しみにしていた「お母さんといっしょ」の時間になっても、まだ復活しない。マンション側の受信設備に問題があるのではないかと、疑ったこともありました。 10畳位の広さの薄暗い警備室みたいなところで、薄汚い仮眠用ベッドに寝そべりながら、14インチの古臭いテレビをカウチ族みたいに見続けているガラの悪い公安警察官。おっ、これはヤバそうだ、と思った瞬間に、チャンネル切り替えリモコンみたいなもののスイッチを押してブラックアウト。あとは、そのまま寝込んでしまい朝までブラックアウトのまま....。けっこう適当にやっているんだろうなぁ、というイメージでした。 でも最近は、けっこう極め細やかなスイッチングが多い感じです。「反国家分裂法」のニュースのときも、北京政府の主張の部分は最後までしっかり放送して、「台湾では...」と始まった途端にブラックアウト、「それでは次のニュース」のときにはキチンと復帰するという神業。もちろん、タイムマージンを取っているのでしょうが、複数衛星経由によるズレも考えると、検閲判断に費やすことができる時間は1秒程度でしょう。また、NHKプレミアムの英語ニュースのときも、しっかり対応しているので、NHKプレミアムという一つのチャンネルに対して、日本語のみならず英語にも対応できる体制で監視しているのだと思います。 きっと、テレビ局の副調整室みたいにたくさんのテレビ画面やスイッチ類が並んだ最新の設備があって、日本語や英語のNGキーワードや映像のデータベースが完備され、それらが放送された瞬間に、自動的に警告が鳴り、ピシッとした制服を着こなしたエリートが、瞬きもせずに見守っているのかもしれないなぁ、などと思ったりもします。 でも復興門にある国家広播電視電影総局には、どうみてもそんな立派な設備があるような気がしません。私も行ったことがありますが、北京にありがちな古臭いタイプのお役所の作りです。 いったい、どこでだれが、どんな基準でブラックアウトの操作をしているのでしょう。興味は尽きません。
by pandanokuni
| 2005-03-16 15:37
| 社会ネタ
|
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