今週は中国からのお客さまをたくさんお迎えしました。もちろんビジネス・トリップではあるのですが、この時期に集中したのは、日本で「お花見」をしたいという要望が大きかったからです。
中国のネット関連企業のCEOやVPの皆さんと、温泉に浸かりながら盛り上がったのは、やはりGoogleの話題でした。中国当局の"優遇"によって順調にビジネスを伸ばしている立場の皆さんですが、Googleには強い思い入れがあるようです。そんな中、GoogleがBaidu(百度)を買収したらどうなるだろうね、という話になりました。 折しも4月1日。これは絶好のエイプリルフールのネタになる、と思い、ネタ元のニュース・サイトを用意して、ツィッターでつぶやこうと思いました。 速報!! GoogleがBaidu(百度)を買収 ネタ元ニュースサイトは、こうしたスクープを発スルには最も相応しいであろうと考える"TechCrunch(日本語版)"のソースを拝借し、テキストだけ書き換えました(ちょうどYouTubeを買収した時の、おあつらえ向きの記事があったのです)。でも、このままアップするのはさすがに問題があるだろうと思い、ブラウザ表示画面をキャプチャーして1枚の画像にしたものをネット上に公開することにしました。しかも、そのページ(つまり1枚の画像)のどこをクリックしても、「ネタでした、ごめんなさい!!」と表示されるように、細心の"注意"を払ったつもりでした。 私をフォローしてくださっている方は100数十人ほどいらっしゃいますが決して多いほうじゃありません。私のつぶやきの流れの中で、すぐにこれはネタだと思って、クスッと笑ってくれるだろう、くらいに考えていました。ところが、予想外の反響となってしまいました。 翌朝、TLをみると200を越すリツィート。RTのコメントを読む限り、本物のニュースだと受け止めた方もいらっしゃいましたが、「ネタだ」「4月1日だよ」「わろた」と言った感じで、エイプリルフールのジョークとして好意的に受け止めてくださったかたも多かったので、安心していました。 ところが、翌4月2日午後に増えていくRTコメントを読んでみると、本気で怒っている=迷惑を被った方がいらっしゃることが分かってきました。ネタ元ニュースサイトのデザインとして利用させていただいたTechCrunch Japanにも問い合わせがあったようで、その公式ツィッターで「これは編集部で用意したものではなく、どなたかが勝手にサイトをコピーして作られたものです。」とコメントを出すような事態になっている....。「TechCrunchの許可をとったのか」と言う@私宛てにフォロワーで無い方からメッセージが飛んでくる...、と言うこと、これはもしかしたら笑い事じゃない、と。 ネタ元ニュース・サイトへのアクセスを調べてみたら、既に4万件を超えていました。 ツィッターというものは、フォロワーやそのフォロワーからだけではなく、まとめサイトやRSSリーダーなどを経由して、どんどん広がっていくものだ、と言う、バイラル・パワーそのものを過小に評価してたんですね...。自分のTL以外にもどんどんネタ元ニュースサイトのリンクが引用されていくので、私の4月1日のつぶやきをご覧にならずに、いきなりネタ元ニュース・サイトをご覧になった方が多かったのです...。バイラル・パワーなどと仕事の時には吹いているクセに、と反省しきりです。 ネタ元ニュース・サイトの削除も考えましたが、逆効果になることもあると思い、ネタ元ニュース・サイトの一部を修正しました。TechCrunchにこれ以上ご迷惑がかからぬよう、そのロゴの一部を改変したり、クリックしなくともネタだと分かるように。 ところで、「GoogleがBaiduを買収」がブラック・ジョークか、と言うと私はそうは思っていません。 BAIDUの時価総額は208億ドル(1.9兆円)。Marsico Funds(9.5%)、 Morgan Stanley(6.4%)などの機関投資家が46%強保有し、創業者や従業員のシェアは5%未満。過半数の流動性は十分確保されています。 いっぽう、Googleの時価総額は1,800億ドル(16兆円)ですから、BAIDUの8.7倍です。仮にGoogleが、10%のプレミアを乗せて、TBO(公開買付)を行えば、マジョリティ(51%)取得するためには、117億ドル(1兆500億円)が必要となりますが、Googleは09年末時点で、102億ドル(9,180億円)のキャッシュを持っていますので、数字の上では決して不可能なストーリーではありません。 上述の通り、Baiduの大株主はアメリカなどの機関投資家で、株式の過半数は中国からみて外資(アメリカが多い)が保有しているのです。中国では、特にインターネットなど情報関連事業で、様々な制約を受けるはずの"外資企業"であるBaiduが、中国で"のびのびと"企業活動を展開しているのには、いろいろなカラクリがあるのです。 ですから、BaiduがGoogle傘下になろうとも、Baiduの経営姿勢が変化がなければ、Baiduは中国で"のびのびと"企業活動ができることになります。Googleが中国でのビジネス上の劣勢を巻き返す手段としても十分あり、と言うことです。 この意味で、Googleがアメリカ企業だから中国当局が追い出した、と言う論理は成り立たないことが分かります。 いっぽう、Google傘下となったBaiduの経営姿勢が、Googleのそれになるのなら、その買収はまったく無意味なものになるでしょう。つまり、中国当局のセンサーシップ要求を呑まない、と決めた時点で、中国におけるメジャーな検索サービスが消えて無くなってしまうのです....。 つまり、Googleが言論や情報アクセスの自由よりも、中国の巨大マーケットが惜しくなった場合、つまりビジネス至上主義をむき出しにするなら、Baiduを買収して中国当局と仲良くすれば良いし、あくまでも"正義"にこだわるのであるのなら、なおのことBaiduを買収してGoogleの姿勢を貫き新生Baiduを閉鎖に持ち込めばよいのです。後者のROIは期待薄かも知れませんが....。 4月1日のつぶやきは一部の方を不愉快にさせるネタになってしまいましたが、楽しんでくださった方も結構いらっしゃったようで、livedoorのPJニュースからは「私的エイプリルフール特別賞」をいただくに至りました。 自分のことを棚に上げて申すなら、評論家やコンサルタントと言われる方のツィッター・リテラシーの低さに、残念な気持ちになりました。裏取りもせずに転載した後で、迷惑がかかるからとネタ元ニュース・サイトの削除を求めるダイレクト・メッセージを寄せてこられた名の知れた評論家のような方がいらっしゃったのも事実です。 ツィッターは気軽で無責任なツールで構わないと思っていますから、私はそのスタンスで楽しませていただいていますが、プロフィールに"それなり"のことを掲げてたくさんのフォロワーを持たれている方には、それなりの責任が求められるのではないでしょうか?もちろんオバマさんや鳩山さんの認証ツィッターほど重いものでは無いと思いますが。 私も皆さんを根っから騙すつもりでネタ元ニュース・サイトを公開したわけではなく、ちょっと調べればすぐにネタだと分かるようにしたつもりです。私もプロフィールに"Sino-Japanese business developper"と掲げてる以上、この領域の発言にはある程度の責任を持とうと思っています(4月1日以外は...)。 末筆になりますが、今回のつぶやきでご迷惑をお掛けした皆さん・不愉快になった皆さんに、心よりお詫び申しあげます。
by pandanokuni
| 2010-04-03 02:49
| 社会ネタ
|
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