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89年初夏、私のビジネス・パートナーは天安門広場に居ました。
潜水艦事件の話題から、中国の報道管制、反日教育と柄でもなく硬い話題に突入してしまったこのブログですが、私の最も身近な中国人の一人であるビジネス上のパートナーの話題を介して、中国人民の中ではごく少数のインテリ富裕層について述べてみたいと思います。89年初夏、私のビジネス・パートナーは天安門広場に居ました。_b0047829_19434166.jpg

彼は1968年生まれ。1989年4月には北京大学の政治学科3年生でした。北京大学は日本の東大のようなもので、地方出身者はこの頃の受験制度では相当優秀でないと入学できなかったようです。彼も中国東北地区の地方都市出身です。その頃の胡耀邦は既に失脚していたとは言え、同学内では人気アイドルのような存在だったそうです。胡氏の訃報とそれに対する政府の対応への不満が重なり、北京の各大学の大学生が次々と行動を起こすことになります。その年の4月下旬、最初の集会が天安門広場で行われたとき、彼も率先して参加しました。すぐ後で学生たちの指導力無き指導者となり亡命したC.L.女史は既に同学を離れていたそうですが、私のパートナーは彼女と以前から面識があり、学生・市民集会が肥大化する前には一緒に話し合ったりもしたそうです。

学生たちが天安門広場に集まり出してから2~3週間は、浮き浮きワクワクの毎日だったそうです。彼は広場には居座らずに、大学と学内の寮と広場を往復しながら、横断幕や宣伝ビラの作成の手伝いをしていました。「きっと中国が変わっていく!良くなっていく!」彼もその頃の彼の仲間も皆そうした想いで、続々と地方から応援に駆けつける学生や市民を迎え入れたそうです。その時点で彼の頭の中にあったのは「数的有利性」だったそうです。多くの人民の支持を獲得できれば、自分たちが漠然と考えている「良い方向」に中国が進んでいくことになるだろう、そしてどんどん仲間が増えていく....

ところが5月も半ばに入ると、彼の希望は不安に変わっていったそうです。天安門広場に集まった人民が肥大化しすぎて、コントロールが効かなくなりはじめたから、だそうです。始めのうちは北京の大学生中心だった参加者も、地方の大学生、そして北京市民、地方の労働者と、どんどん増えていき、政府に対して整然と「民主化」を訴える状況では無くなってきたのです。大学や労働組合単位で動員される参加者は、「文化大革命」の頃体制側が行ったことと大きな違いがなくなって感じがし、またコントロールが効かなくなった群衆はきっと「力」で抑えるしか無くなるだろう、これは天安門広場の指導者が行うのか、その北西に対峙する中国政府が行うのか、どちらが行うにしても「権力の行使」が必要になる、とパートナーの彼は考え始めたそうです。彼はひとり北京を離れることを決意したそうです。この頃には離脱する北京の学生がかなりいたそうです。彼の仲間も何人かは離脱を決めたそうですが、離脱した仲間同士で固まることはできないような雰囲気だったそうです。北京に留まるのも出身地に帰省するのも気が引けた彼は、かつてから行ってみたかった西安に向けて列車に乗ったそうです。古都を旅した彼が北京に戻ったのは、あの事件が発生して1ヶ月ほど過ぎてからだったそうです。

彼は北京大学を卒業し、外資系企業に就職し、日系企業へと転職し、いまは年商3億RMB(約40億円)のサービス業の会社の最高責任者となり、日本で買うと1,000万円はくだらない高級ドイツ車を乗り回しています。私のビジネス・パートナーであり、私には有益な理性的アドバイスをしてくれます。
私が尋ねれば、彼は89年初夏のことを積極的に何でも話してくれます。ただ彼自身のあの運動自体に対する総括は「まったく無意味」。中国の知的階層が「民主化」を諦め現体制を容認するエポックにはなったけど....と言います。

13億の人民を有する中国を統治することは並大抵のことではないのでしょう。「数的優位性」はコントロールができなければ不利に転じてしまう....学生を中心とした数万人の群集すらコントロールするためにも「強権」が必要なんだ...まして、13億もの烏合の民(失礼!?)を国家としてまとめていくには、他に良い方法が無いだろう、と彼は言います。現体制を容認する、とは決して言いませんが....彼には共産党幹部候補生や共産党青年団の知り合いがたくさん居ます。ビジネスの上でも大切な人脈なのです。彼も彼の知り合いの現体制幹部も日本のことを結構良く知っています。いまの中国で一般的に流布されている日本に関する情報や報道のすべてが正しくは無いことも、中国では公式に報道されていない事件や話題も。
中国の多くのインテリ層(四年制大学卒以上としておきましょう)や富裕層は、中国の公式報道以外の情報をさまざまな手段で入手し、或いは確認することができる状態だと考えてよろしいでしょう。彼らの多くは、反日教育やプロパガンダをまっとうに受け入れたりはしていないと思います(領土問題の活動家もインテリらしいですが)。かと言って、89年初夏のできごとを経験している年齢層は、日々の暮らしとお金儲けが大事でしょうから、現体制に対抗するのはお利口なことではないはずです。
でも、中国13億の人民の大多数は、中国の公式報道以外に情報源を持たない人たちなのです....
by pandanokuni | 2004-11-22 15:44 | 政治ネタ
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