中国の潜水艦領海侵犯事件に関して、手厳しいコメントの連続ですが、私が「盲目的な親中派」でないことはご理解いただきたいと思います....
これまで繰り返されてきた「土下座友好」、その「日中友好」の名の元で行われてきたリターンを顧みない対中投資、感謝されるどころか減らそうとすると脅迫のネタにされてしまう巨額の対中ODA....日本の政治家や一部の経済界がこれまでに行ってきたこうした施策は、政府間の関係をより良くするにも、日中間のビジネスを両者にとってより良い状態にさせるにも、両国の国民の間のわだかまりを小さくするにも、決して効果的な方法では無いと思うのです。 中国政府も本気で日本に喧嘩を売るようなことは考えていないはずです。ただ、現体制には日本を敵視することで人民の支持を維持できる、という大きなジレンマがあります。 共産党独裁政権の正当化の理由の一つに「抗日解放戦線」での活躍があるからです。中国では小学生のときに「共産党がなければ、新中国もありません」という文脈の中で、南京大虐殺を惨たらしい描写により学ばせています。日本の過去の過ちを日本の「過去」の過ちを永続的に追及することこそ、13億の民を「愛国心」という大儀でまとめるため、共産党独裁政権が取ってきた方針です。 これが江沢民がリーダーになったあたりから、「過去」の過ちを現代の日本を結びつけた批難が強まったのです.... こうした状況下での犠牲者は、人民だと思います。 私たち日本人や海外に住む中国人が、日本の外交や中国政府の態度に苛立ちを覚えたり、歯軋りしたりすることができるのは、判断できる情報を得られる環境にいるからです。でも多くの中国人民が知り得る情報は、中国政府によってコントロールされています。 新華社のウェブサイトは潜水艦領海侵犯事件について、04年11月19日10:00現在、一言も掲載していません。外務省の章報道官の定例会見のページでも、この事件に絡む発言は削除されています。中国で一般人民がよく閲読する新聞は各地域で発行される夕刊地方紙ですが、国際ニュースに関しては、ほとんど新華社報道を引用しています。ですから、多くの一般的な中国人民はこの事件を知らないままです。 私が知る限り、唯一11月18日付「中国青年報」の「日本の対中外交は本末転倒」と題する石洪涛の署名入り論評(中国語版ウェブサイト)の中で、「そのうえ、日本政府は原子力潜水艦の領海侵犯問題まで持ち込んでいる」と一行だけ触れていますが、記事全体が日本の外交姿勢を批難したものですし、潜水艦事件の事実関係を知らない読者が読んでも何のことだかわからない文脈です。 同様なことが日本人にも当てはまらないわけではありません。日本のマスコミも一部の中国しか伝えられないからです。某公共放送のように、日中間の懸案事項など存在しないが如く、民族闘争の舞台となっている地域を美化して番組にしたり、うまく行っていない企業が大半の中国ビジネスを絶好調の如く報道する...或いは某民間放送のように、すべての中国人民が日の丸に火をつけたが如く、反中感情を煽るような報道をする....当然、中国よりははるかにバランスが取れていて、情報量も多い日本の中国報道ではありますが、それでも実態にそぐわないような取り上げられ方はたくさんあると感じています。 平和主義者の私個人として、「歩み寄り」がイケないことだと思っていません。お互いに国内で抱える問題はたくさんあるのでしょうが、中国と比べて柔軟な対応が可能な環境にある日本のほうが歩み寄るほうが現実的だと思います。ただそれは、いままで繰り返してきた「弱腰外交」でも日本側が一方的に膝を折ることで維持できた「日中友好」でも無いことは確かです。そして、強者と弱者の関係としてどちらかの国民に意識付けられてしまうような「歩み寄り」でもイケないとハズです。 私のような、中国に居るフツーの日本人としてできることは、身近な中国人にいまの日本、いまの日本人をできる限り知ってもらうことでしょう。軍刀を振りかざし中国人の生首を曝している日本人だけが、日本人では無いということ。そして、日本の報道だけでは伝わり切れていない、中国の事情を、細々ととは言え、日本の方にレポートすること....そんなことなのかも知れません。 このブログは、そうしたギャップを少しでも埋められたら、という気持ちで立ち上げました。当然、私個人のフィルターが通ってしまうでしょうが、他にもこうしたサイトがたくさんあります。少なくとも私たち日本人は、様々な中国に関する記事や論評にほぼ自由にアクセスできますし、自由に発言できるわけです。 日中関係正常化のため、もっと大きなことを言ってしまえば、中国の人民を共産党政権の呪縛から解放するために、熱い議論を戦わせていくことができれば、うれしいことだと思います。
by pandanokuni
| 2004-11-19 14:28
| 政治ネタ
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