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カテゴリ:政治ネタ( 43 )
胡錦濤や温家宝も、ダライ・ラマ14世も事態収拾への影響力を失ってしまったのではないだろうか?
3月14日までは、人民解放軍は表立った制圧行動に踏み込んでいなかった、と考えることはできそうです。
これはチベット人の女性執筆家のものとされるWoeser's Blogの記述からの推測です(産経新聞福島記者の北京趣聞博客 (ぺきんこねたぶろぐ)にて日本語で読むことができます)。

3月14日まで中国側の制圧行動の主語は"当局軍警""警察"武警"で、恐らく「武装警察」が中心だったことが窺われます。13日までの制圧行動は、"殴打""催涙弾"でしたが、14日に初めて"開槍"(発砲)という記述が表れます。
日本人旅行者が撮影したものとしてメディアに公開された写真の装甲車・機動車などは、私のみた限り「武装警察」のもので、恐らく14日までに撮影されたものではないかと考えます。
14日に"当局取消了開槍禁令"つまり<当局は14日に発砲禁止令を解除した>とあります。そして、15日の記述に、<ラサは当局の調整により「正規軍」によりコントロールされた>とあります。人民解放軍が正式に投入されたのは15日になってからなのでしょう。外国の通信社が配信した、新聞紙で解放軍のマークを隠した機関砲車の撮影時期が確認できませんでしたが、おそらく14日か15日以降なのではないでしょうか。

3月10日から発生したチベット仏教の僧侶を中心に行われた中国当局への抗議行動やデモに対して、少なくとも13日までの中国当局は、発砲に関して自制し、正式な意味での正規軍(人民解放軍)の投入はしていなかったのではないかと推測できます。
もちろん、それ以前に催涙弾や警棒その他を駆使した殴打など(彼らにしてみれば自制が効かしたつもりでも)、チベット人にとっては耐え難い暴力を用いての制圧行動と、抗議行動の指導者・参加者を不法に拘束するという方法で、チベットの人たちの中国当局や漢民族に対する"怒り"を燃え上がらせたのでしょう。

18日に第11期全国人民代表大会(全人代)閉幕後の記者会見で、「ダライ派が組織したものだ」と引きつった顔で言い切った温家宝さんをテレビニュースでみたとき、私は何だか操り人形でもみているような感じを受けました。
89年の天安門事件のとき、温家宝さんは趙紫陽さんとともに学生側に同情的でした。天安門広場に陣取る学生のところに赴いて、平和的に説得を試みたのも温家宝さんでした。もちろん、時も流れて権力の頂点に立てば、態度も一変するかもしれません。
しかし、中国中枢部の見解として、早々に「ダライ・ラマによる計画的な騒乱」と位置づけたこと自体、言葉の上では「調和(和諧)社会」を打ち出している胡錦濤さんと温家宝さんらによる指導体制で決めたことにしては、浅はか過ぎるように思えたのです。

ダライ・ラマ14世は、非暴力と"調和"の路線を堅持しようと思っていたはずです。
一連の事件が発生する前の3月7日、「ダライ・ラマ14世が北京オリンピックを妨害しようとしている」と言い出したのは、中国チベット自治区の張慶黎・同区共産党委員会書記だったようです。ダライ・ラマ14世の側近は翌日(8日)、ロイターの電話取材に「ダライ・ラマは北京五輪をずっと支持しており、そのことを再確認した」と述べています(ロイター日本語サイト)。さらに、"チベット民族平和蜂起49周年記念日"である3月10日の声明でも、条件付ではあるものの北京オリンピックの支持を打ち出していました。
中国の人々は、今年中国で開催されるオリンピックを誇りに思い、たのしみにしています。私もまた当初から、中国がオリンピックの開催国となる機会を得られるようにと、支持しておりました。国際的な競技大会のなかでもとりわけオリンピックは、言論の自由、表現の自由、平等と友好が第一とされます。中国は、これらの自由を提供することによって、良識ある開催国であることを証明するべきです。それゆえに、国際社会も自国の選手を北京に送り込むだけでなく、このような問題に中国政府が取り組むべく喚起する必要があります。多くの国の政府、世界中の非政府組織や個人が、オリンピックを機に中国が前向きな変化を遂げられるよう事業の多くを引き受けていると聞いています。このような方々の誠意を、私は深く称えています。オリンピック閉幕後の中国を見守ることが非常に重要になると、私は断言したいと思います。オリンピックが中国の人々の心に大きな衝撃を残すことは確実です。世界の国々は、オリンピックが閉幕しても、中国内部で引き続き前向きな変化が生まれていくよう、彼らの結集したエネルギーがいかに活かされていくか模索していく必要があります。
ダライ・ラマ14世が、チベットの独立ではなく"高度な自治"の獲得という現実的な路線を平和的に推し進めようとしていることは、既に国際社会のコンセンサスを得ていると考えてよいでしょう。

中国の対外情報の収集と分析の能力、外交戦略について、私は少なくとも日本のそれより勝っていると考えていますし、まして北京オリンピックの成功にこだわりを持っている中国の中枢部(具体的には胡錦濤さんや温家宝さんら)が、ここまでKYとは思い難いのです。

ここで気にかかるのが中国の軍部を中心とする"強硬派"の暴走です。
上海閥との権力争いにはほぼ決着がついたとしても、現政権の中枢は磐石ではありません。特にいまだ強力な影響力を持つ軍部は日和見なところがあって、この時期に開催されていた全人代において、胡錦濤さんの規定路線に沿って事実上の後継を決めてしまうやり方に、反発も大きかったのではないでしょうか。
13日或いは14日までのラサを中心とするチベット人の抗議行動に対する胡錦濤執行部の対応の甘さを軍部に突かれ、14日以降軍部を中心とする"強硬派"の発言力が急速に増したと考えることもできるのではないでしょうか。。

89年のチベット事件で強硬路線を貫き出世したといわれる胡錦濤さんも、世界からイヤでも注目を集める国家の頂点に立ち、「調和(和諧)社会」なんて打ち出したものだから、かつてと同じ強硬路線で制圧するのは得策ではない、と考えた可能性は高いと思います。現に14日の段階で「チベットの安全は全国の安全にかかわる」みたいな曖昧な発言で、"ダライ集団"による計画性には触れていません。軍部がこうした"甘さ"を突いて、対応の主導権を奪ったと想像したくなります。
さらに言うなら、15日以降の中国のBBSの書き込みは、軍部賞賛の方向に流されている感じすらあります。

いっぽうチベット人もダライ・ラマ14世のもとで、一枚岩になりきれなかったのかもしれません。彼が打ち出している"高度な自治"や"非暴力"という穏健な路線に不満を持つ人たちがいるのも事実でしょう。
中華人民共和国の領土内で中国当局や他民族に抑圧された生活を現実として送っているチベット人にとって、精神世界を糧に理想を思い描きながら忍耐強く生き続けるには、もはや限界に近い状態になっていたのでしょう。
そうした人たちにとって、北京オリンピックが開催される今年こそ、最後のチャンスなのかもしれません。ダライ・ラマ14世の意志に背いてまでも、行動を起こす必要性に駆られたのかもしれません。

このように推測していくと、チベット事件の解決において、中国の中枢部もダライ・ラマ14世も実質的な影響力を失ってしまっている、と言う感じがして、行く末が恐ろしく心配です。
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by pandanokuni | 2008-03-23 15:05 | 政治ネタ
ネット統制のいたちごっこ。中国当局、こんどはRSSフィードをブロック!?
どんな国家権力でも政権に都合の悪いことはできるだけ隠したいものでしょう。

反政府デモが広がったミャンマーでは、政府がインターネットをコントロールしているそうです。
治安当局は電子メールのアドレス保有者(2万5000人=05年)に厳しい目を光らせる。テイザ氏の話では、ヤフーやグーグルなど大手検索サイトも治安当局によって監視され、政治的なブログは自動的に排除、ファクスの所有にも免許制度が課せられている。』とのこと。それでもミャンマー国外に拠点を置く反軍政組織は、『インターネットを厳しく規制している軍政が摘発できない特別なソフトウエアを使って、外国の拠点にネット送信させている。』そうです(9月29日付けIZA)。
それでも、凄惨な反政府デモ弾圧の様子を伝えていたミャンマーの一女性のDawnさんのブログは9月27日から更新できない状態にあるようです。

ノムヒョンさんが遊びに行った際、北朝鮮の首領様は「インターネットの専門家の私から言わせてもらえば、韓国企業が進出する工業団地だけならまだしも、別の地域までつながると問題が多い(ので、接続させないよ!!)」とおっしゃったらしい(10月5日付けIZA)。

私は国家権力による"言論統制"が、独裁政権下の専売特許だとは思っていません。"自由の国"アメリカ或いは日本でも、とりわけマスメディアを通したコミュニケーションにおいて、多かれ少なかれ権力による統制が効いていると考えておいたほうが良いと思っています。
とは言え、ミャンマーや北朝鮮などの非"民主主義"国家、そしてその"親玉"とも言える中国においては、顕著にあらわれています。

中国当局のインターネット統制は、このブログでも何度か取り上げました。
特定のサイトをブロックしてアクセスできなくしたり、検索結果に表示されないようにしたりして、国家権力にとって都合の悪い情報の流入を食い止めようとするだけではなく、メール発信を監視や規制、ブロガーの身分を登録する動きなど、情報流出にも敏感に対応しています。
とは言え、こうした国家によるネット統制は、賢いユーザーによってすぐに対策が講じられ、無意味化されていくのです。ユーザー側がTorやプロキシ経由でアクセスを試みることによって、或いは発信する側がこまめにサーバーやURLを切り替えることによって、真に情報を必要としている中国人民はいろいろ工夫して、必要な情報にたどり着いたり、発信したりしているのです。当局のネット統制によりアクセスできなくなったブログであっても、特定のRSSリーダーなどを介して読むことができたりするわけです。
政策あれば対策あり、でネット統制は国家とユーザーの"いたちごっこ"と言えるでしょう。

中国当局の"次の一手"は、RSSフィードをブロックすることのようです(10月5日付けTechCrunch日本語版)。
最近はニュースサイトまで行かなくとも、また特別なRSSリーダーを介さなくとも、お気に入りのポータルサイトのマイページをちょいとカスタマイズするだけで、ニュースのアウトラインが読めるようになりました。CNNのニュースサイトへのアクセスをブロックしたとしても、自国の指導者の悪口なんかはGoogleリーダーなどに表示されてしまうわけです。
そんなわけで、RSSフィールドそのものをブロックしてしまおう、と言う発想になったのでしょうが、これも"いたちごっこ"の一環でしょう。

TechCrunch日本語版は、現代の万里の長城とも言える中国当局のネット統制を、もはや政治的問題としてではなく、「オンライン市場における自由競争の障壁になりかねない」と心配してあげています。
中国には頭の良い方がたくさんいらっしゃいますから、政治的に"壁"を乗り越えたいと考える人たちは、何らかの手段でネット統制を打ち負かしてくれるはずです。むしろ、そうではない、単にインターネットでエンタテイメントやコミュニケーションを楽しんでいる1億6,000万の人民にとっては、ただ邪魔なだけな"壁"ですし、中国のオンライン市場で一儲けしたいと願っている国外オンライン企業にとっては、極端に高い関税を掛けられているようなものなのです。

ネット規制を政治的に批判しても中国当局は意地になるだけでしょう。公平な商取引と言う観点から責めてみるのも面白いかもしれません。
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by pandanokuni | 2007-10-06 02:09 | 政治ネタ
親米嫌中の末路。
我々は安倍首相が職務を辞する決定を下したことを気にかけています。これは日本の内政問題ではあります。ここ数年、日中関係は両国政府と各界の皆さんがともに努力した結果、明らかに改善と発展をみることになりました。日中関係改善と発展のため、安倍首相リーダーシップとイニシアティブを発揮されました。我々は、両国関係を一歩ずつ進めることが、両国と両国民の根本的利益に適うものであり、この流れは引き継がれるものと信じています。

中国外務省の広報官・姜女史の9月12日の記者会見での発言です(中国外務省サイト)。
中国ではテレビニュースがトップ扱いで、安倍首相辞任表明を報じ、NHKが放映した北京市民へのインタビューは安倍首相の対中関係改善の業績を評価し、辞任を惜しむ声でした。
ポータルサイト「新浪網」に開設されたBBSには「惜しいことだ。安倍氏は有能な人物だから、再起して欲しい」「安倍氏は穏健な政策を打ち出していたように思う。なぜこんなに早く辞めるのか理解できない」など安倍氏の功績を評価する声が目立っているそうです(中国情報局)。

首相就任前、タカ派とみられていた安倍さん。ならず者国家・北朝鮮に対してのみならず、非民主主義国家・中華人民共和国に対しても、強気の主張を繰り返してきました。政権を意識したころに出版した『美しい国へ』ですら、"中国専門家はだれもが中国と恋におちる"と親中派をけん制しつつ、"日中関係は政経分離の原則で"を主張し、"政治的な目的を達成するために経済を利用することはしない"と明言したのです。
その安倍さんが日本の総理大臣に就任して2週間も経たないうちに訪れたのが中国でした。日本の経済界からの強い圧力があったとも囁かれました。

日本の総理大臣になったからには、生理的に気に入らなくても、隣国であり日本の経済と気っても切り離せない存在になった中国とある程度仲良くしておかなければ、と言う良識は持ちえていたにせよ、安倍さんはアメリカのことが好きでたまらなかったのでしょう。きっと真面目なタイプの方ですから、個人的にというよりは日本の国益を考えて、アメリカを好きにならなければならないと思ったのかも知れません。

ところが意中のアメリカは、自国の国益の役に立たない者には冷酷なのだと思います。
(米国家安全保障会議の)ジョンドロー報道官は「ブッシュ大統領と安倍首相は非常に良好な実務的関係を保ってきた」と指摘。「米国と日本は強固でしっかりした同盟だ。将来もこの関係を続けることに期待している」と述べた。(日刊スポーツWeb)
ネットワークテレビのニュースや主要紙では、大きな扱いで報道されなかったようです。

安倍さんを追い詰めたのは、9月8日にシドニーで行われたアメリカ・ブッシュ大統領との首脳会談だったのではないでしょうか。
ここからは憶測で会談の模様を再現してみます。

安倍さん「給油の件は中断しないよう、一生懸命頑張りますからぁ....。」
ブッシュさん「ホント大丈夫なの?民主党はシンゾーを虐めたいだけでしょう。たとえ共産党が日本の政権を担うことになっても、アメリカに頼らざるを得ないんだよ、日本って国家は....」
安倍さん「はぁ、各方面から尽力中ですので、ご安心ください。」
ブッシュさん「まぁ、シンゾーが約束してくれてもねぇ....。無理なんじゃないのぅ?」
安倍さん「いや、努力しますから」
ブッシュさん「結果を出してもらわなきゃ困るんだよ!!分かってるんだろうねぇ、プライムミニスター。」
安倍さん「はぁ.....」
ブッシュさん「あ、そういや、ウチ、ならず者のキムさんとこと仲良しすることにしたから。イランとかイラクがバタバタしててねぇ....。」

アメリカとの関係を最も重要視し、アメリカへの気遣いを怠らず、頑張ってきたつもりの安倍さんではありましたが、そのアメリカにハシゴを外され、胃に穴が開いてしまった彼を待ち構えていたのは、身内のいじめっ子麻生さんと与謝野さんだったのでしょう....。

安倍さんにしてみれば、中国政府が音頭取りをして盛り上がってる中国人民の安倍さんを賞賛し辞任を惜しむ論調はきっと嬉しくは無いでしょうが、アメリカがホントに恐ろしい国家であることは身に沁みて感じたのではないでしょうか。
愛する人に裏切られたときの悲しみほど、つらいものはありませんよね。
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by pandanokuni | 2007-09-13 22:08 | 政治ネタ
観光地・杭州の『宋城』で垣間見る中国の覇権主義。
仕事で行ったはずの杭州でしたが、なぜか観光施設である『宋城』に立ち寄ることになってました。

『宋城』は杭州が首都だった南宋時代の街並みを再現したテーマ・パークで、胡散臭いお土産屋さんが軒を並べている、『日光江戸村』みたいなものだと思っていただいて良いのですが、『宋城千古情』という"全景式大型歌舞"が最大の呼び物とのことで、パンフレットのふれ込みは「フランスのムーランルージュやアメリカのラスベガスを凌ぐエンタテインメント」。世界各国から毎年160万人が見に来ているらしい....。

この種のパフォーマンスやショーは、ディズニー・ワールドのそれを越えるモノは無いだろうと鷹を括っていたのですが、エンタテイメントとしての完成度はかなりのものでした。
世界的な(?)観光地を標榜するだけあって、スクリーンに映し出される解説の字幕は、中国語だけではなく、英語、日本語、韓国語も併記されており、中国語が分からない観光客にも何となくストーリーは理解できるようになっています。

パフォーマンスは4部構成で、第1部は中国の伝説時代、第2部は宋朝の隆盛、第3部は宋朝の滅亡、第4部は未来と世界との絆、と言う感じです。男女数十人のダンサーが繰り広げるパフォーマンス、市川猿之助なみの宙吊り、お馴染みのサーカス的雑技の要素もふんだんに盛り込み、レーザーやPARライトを駆使した照明効果、滝のような雨を舞台に降らせるばかりか、客席にまで霧雨を降らせ、前方の客席が移動してその跡から突然セリが上がってきたり、とディズニーのミッキーマウスのショーを越え、ブロードウェイのミュージカルに迫る本格的なエンタテイメントに仕上がっています。

b0047829_143344.jpg第1部で演じられる、この国"十八番"の『梁祝伝説』(悲恋の男女が蝶になるという中国版ロミオとジュリエット)は、中国にしては抑え気味のライティングでかなり幻想的に仕上がっており、第2部の宮廷の女性たちの舞いは美しくかつセクシーでした。第3部ではこの国の英雄にして勇敢に蛮族(!?)金に立ち向かった岳飛がかっこよく登場し、カンフー映画並みのアクションを繰り広げるばかりか、、南宋軍の騎馬隊は馬は本物が登場(テーマパークで観光用馬車を引いていた馬の使いまわしという感もありましたが....)。

第4部はいきなり現代から未来にぶっ飛ぶと言う設定です。まぁ、これまで中国のパフォーマンスでこの種のテーマを表現するとなると、中国の"国力の象徴"と自負しているであろう、大都市部の高層ビルや新幹線まがいの列車、安っぽいロケットなどが登場させるのが常套手段という感じだったのこですが、この『宋城千古情』という舞台はちょいと方向性が違っていました。

なんと突然、背景に富士山が現れ、舞台には桜と思しき樹木が立ち並び、女性ダンサーが和服と思しきコスチュームで、我が日本の『さくらさくら』の音楽に合わせて、日舞と思しき踊りを踊り始めたのです....。これはこれでキレイだったのですが、どうみても日本の雰囲気が出てはいませんでした。
スクリーンの字幕解説によると、"世界は一つ、世界中の友達とともに"みたいな流れで、日本の富士山と『さくらさくら』のパフォーマンスが始まり、次は何故かインド系のダンスが続きます。なぜ、インドなのか不思議ですが、中国では最近インドのテレビドラマやインド映画のDVD(もちろん違法コピーもの)がそこそこの人気なので、中国人の観客に親近感でもあるのだろう、と考えていました。
ところが、次に台湾民族の総称である"高山族"の民俗舞踊が登場したときには、何となく不愉快な感じがしてきました。そして最後の締めは、韓国(朝鮮)の『アリラン』の踊りです....。

つまり、"世界は一つ、世界中の友達とともに"というテーマで、日本、インド、台湾、韓国(朝鮮)の民俗的パフォーマンスが演じられたのです。
観客の中には修学旅行と思しき韓国の高校生の団体がいて、"アリラン"のダンスが始まると一斉に歓声が上がりました。さすがに民族意識が強いと思ったのですが、喜んでいてよいものだったやら!?
ほとんどの観客は中国大陸の人たちです。字幕は中国語のほか、英語、日本語、韓国語でも表示されていたので、アメリカやイギリスを中心とした欧米人、日本人、韓国人などもかなり訪れているのでしょう。
第4部の"世界は一つ、世界中の友達とともに"が、こうした異国からの来場者に対するサービスであるとすれば、『さくらさくら』や『アリラン』が登場するのは理解できなくもありません。でも、インドからの来場者などほとんど無さそうなのにインドのダンスが出てくるのには違和感があります。杭州を訪れる観光客の割合から考えると、アメリカのフォークダンスでも取り入れたほうが合理的なように思えます。

でもこれを、中国中心に"世界は一つ"という発想で考えてみると合点が行きそうに思えます。インド、台湾、韓国は、共産党政権成立後に紛争のあった国や地域です。まぁ、日本も中華思想からすると"属国"の一つに過ぎないのでしょう。ほんとはベトナムあたりの民俗舞踊も取り上げたかったところではなかったのでしょうか?さすがに、アメリカやヨーロッパの国々やロシアには遠慮したのでしょう。
共産党政権の政治原則である"一つの中国"が、北京オリンピックのテーマである"一つの世界"と合体して、いずれは"中国を中心とした一つの世界"へとたどり着くのは、そう遠い未来では無いと考えている人たちがいるのでしょう。

こんなパフォーマンスの中にも、中国の覇権主義というものが浸透しているように感じられた杭州でのひとときでした。

全景式大型歌舞『宋城千古情』の紹介ムービー
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by pandanokuni | 2007-05-13 14:03 | 政治ネタ
権力によるYouTube遮断にもいくつかのスタイルが....。
YouTubeにアップロードされた動画に関して、何らかの損害を被る際の対応の方法は、大きく分けて二通りになるでしょう。
比較的友好的な方法は、YouTubeに当該動画の削除を要求すること
その対極とも言えるもう一つは、YouTubeの当該動画を視ることができないようにネットワーク上の細工をすること

前者の例で言うと、日本のテレビ局なんかが躍起になってYouTubeに削除要求をしているようですが、著作権関係者が権利を守るためにとる措置が多いようです。
ところが著作権侵害とは別の理由で削除を要求したのが東京都選挙管理委員会。YouTube上にアップロードされた、都知事選挙の政見放送の動画が対象で、
公職選挙法で政見放送の回数は決められており、特定の候補者の映像だけが自由に見られる状況は各候補者間の公平を損ね、好ましくないと判断したため、削除要請に踏み切った
そうです(ASCII.jpトレンド)。これは、既存メディアなどの競合勢力が自らの権利や利権の保護を目的としたものではなく、行政権力によるYouTubeの遮断と言えるのですが、その行政権力が何らかの損害を被るから、と言う理由で無さそうなのが、まだ救われる感じです(一応、公平な選挙のため....)。しかも、あくまで削除要求ですし。

国家権力が自身にとって不都合なウェブサイトへのアクセスを遮断すると言う方法は、中国の得意技とされてきました。中国国内から中国当局に不都合なウェブサイトにアクセスすることは至難の業です。YouTubeにアップロードされた動画であっても、中国人民に見せたくないモノへのアクセスは"さり気なく"遮断されます。

この"さり気なく"というところが重要なワケで、例えば2006年10月にチベットで国境越えを目指していたチベット仏教徒の若い修行者たちに中国人民解放軍が発砲して数名を射殺した際の映像は、中国国内からのアクセスがほぼ遮断されてしまいます。いっぽう、中国当局にとってデリケートな地域であるチベットの動画でも、例えば私が撮ったショートムービーなどは、中国国内からもフツーに視ることができます。つまり、チベットに関するあらゆる動画を遮断するのではなく、ヤバそうな動画だけ絞り込んで、こっそりとアク禁にしているわけです。
ですから、気付かないでいれば見過ごすこともできちゃう恐ろしさがあるのです。

いっぽう、国家権力が堂々と(?)YouTubeへのアクセスを遮断したのがタイ王国。政府が国王の顔に細工をした"不敬な"動画をアク禁したそうです(gooニュース)。YouTubeに対し、国家権力として削除を要求したのですが、受け入れてもらえなかったのでアク禁にしちゃったようです。このニュースからだけでは、タイ政府がYouTube全体を遮断しているのか、当該動画へのアクセスだけ遮断しているのか不明ですが、中国のように"さり気なく"遮断したのではなく、堂々と遮断したようですね....。
まぁ、いまのタイ王国は軍事クーデター後の暫定政権なので、アメリカあたりが言うところの"民主度"が低い状態ですから、これはこれで良いのかもしれませんが、国家元首への不敬(タイ王国)と独裁政党への不敬(中華人民共和国)って、似てそうで似て無そうなものなのかもしれません。わが国の皇室を侮辱するような動画(例えば『週刊金曜日』の集会で演じられた寸劇)なんかが、YouTubeにアップロードされた場合、"民主度"の高い日本の政府関係者は、何か対応するのでしょうか?

ある意味"民主主義的な"手続きで、YouTubeへのアクセスを遮断したのがトルコ共和国かも知れません。
インスタンブール第一刑事治安裁判所は水曜日、ビデオが近代トルコの建国者、アタテュルク・ムスタファ・ケマルを侮辱したとして、ユーチューブへのアクセスを勧告ベースであはるが、禁止した。トルコの最大手の通信サービス会社、トルコ・テレコムはこの決定を受けてすぐにアクセスを禁止した。(The Blog HERALD=AP通信電の引用)
建国者を侮辱した動画に対して、裁判所がアクセスの禁止を勧告し、その勧告に接続サービス会社が従った、と言うことになっているようです。

中国のように"さり気なく(?)"遮断しちゃう国、タイのように"堂々と(?)"遮断しちゃう国、そしてトルコのように"民主的に(?)"遮断しちゃう国、ほんと世界も様々だなぁ、と思うきょうこの頃ではあります。
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by pandanokuni | 2007-04-06 19:08 | 政治ネタ
9月25日-陳良宇失脚、9月26日-安倍政権発足、10月8日-日中首脳会談。
日本では"反日教育"と称されることの多い中国の"愛国教育"を強く推し進めて行ったのは江沢民さんです。江さんは1989年のいわゆる"天安門事件"以後、政権政党から人心が離れて行きつつあった1992年に党書記になりました。「北京で多くの市民や学生を殺めてしまったけれども(もちろんこのことを公に認めたりしませんが)、政権政党と人民解放軍はその昔"日本の帝国主義と侵略主義"と戦って、中国人民を守り抜いてきたんですよぉ。」と言う感じで、ヒーロー=中国共産党、悪役=(むかしの)日本、というディジタルでわかり易い歴史観を子どもたちに植え付けてきたのです。ヒーローの末裔でもありシナリオライターでもある江さんは、悪役の日本と簡単に妥協することはできませんでした。中国では悪役は何百年も何千年も悪役であり続ける場合が多いのです。

中国の政権政党、行政府、国軍のトップに立った江さんでしたが、2002年から2004年にかけてこれらの地位を"表向きは平和的に"胡錦濤さんへ譲りました。
とは言え、江さんがトップだった時代に"いい想い"された方がたくさん居るわけで、色んな"いいこと"が胡さんとその仲間うちへとすっかり持って行かれてしまう状況は避けなければなりませんから、引退後の江さんは悠々自適のご隠居生活を過ごすわけには行きませんでした。胡さんが、江さん路線を少しでも変更しようとすると、江さんは武器を持った仲間とともに脅しをかけて止めさせたりしてきました。自分と仲間の立場を守らなければ、いずれは自分自身が(むかしの)日本のように"悪役"にされてしまいかねません。前立腺に腫れ物が出来て、おしっこが出なくなっても、江さんは胡さんの思い通りにさせないようにと、影響力を保持してきたのです。

江さんが強化した"愛国教育"で育った子どもたちが20代を迎え、2005年4月に発生した"反日デモ"の原動力になもなりました。日本をいつまでも"悪役"にする限り、中国の日本に対する感情は良くなりません。悪化する"日中関係"に関して、中国政権内部では様々な打開策が議論されたはずですが、上海の江さんパワーに気兼ねして路線変更できなかったばかりか、より強硬な意見が支持されたりもしたのです。

いつまでたっても江さんに仕切られたままでは、胡さんも愉快ではありません。目立たぬようにされど着実に、江さんパワーを削ぐ準備を進めていました。軍人さんを味方に取り込んで、地方の有力勢力も丸め込めつつ、表向き"平和的に"....。
そして、この夏にはいよいよ"仕上げ段階"に突入したのです。8月には、過去の江さんの演説や発言をまとめた書籍『江沢民文選』が大々的に発表・出版され、胡さんが仕切る中国メディアが大々的に宣伝しました。いわば"褒め殺し"。こうなるともう、江さんも毛沢東さんや鄧小平さんのように"過去の人"として、祀り上げられるだけの存在です。
『江沢民文選』の発売を合図に、数百人とも言われる"刺客"が北京から上海に送り込まれました。上海で影響力を保持する江さんの一味に止めを刺すためです。そして、胡さんたちの経済引き締め政策に楯突いてきた江さんの仲間うちの陳良宇さんが、政権政党の重要ポストから追われてしまったのが、9月25日です。

胡さんたちによる、江さん一味の排除作戦は現在も進行中ではありますが、ここまで来ればもう胡さんは、江さんに気兼ねせずに政権運営ができるようになったと言えるでしょう。対日外交についても江さん路線に束縛される必要が無くなったと考えられるでしょう。

日中関係問題で胡さんたちが心配しているのは、
(1)"愛国教育"で育った若者たちの"反日思想"が一層過熱化した場合、人民全体をもコントロールできなくなること。
(2)首相の靖国参拝というワン・イシューで、日本との首脳会談を"袖に"してきた子ども染みた外交態度を欧米諸国などから非難され、国際社会の評判が低下すること。
(3)両国の国民感情レベルの"不信感"や"憎悪"が増すことで生じる経済への悪影響。具体的には日本企業の中国への直接投資の衰退や日本向け輸出の減少。
ではないでしょうか。心から日本と仲良しになるつもりは無いと思いますが、この数年来の最悪な状態をカイゼンすることが"国益"となると考えているはずです。

そして9月26日、安倍内閣発足。
その前日から大々的に始まった、江さん一味の"お世継ぎ"、陳さんなどへの"腐敗追及キャンペーン"は、日本の新政権発足にタイミングを合わせた動きとも思えてしまいます。小泉さんの意図的とも言える"負の置き土産"のおかげで、アジア、特に中国や韓国との関係をカイゼンできる絶好のシチュエーションを得た安倍さんにとって、実にラッキーな出来事とも言えるでしょう。
そして、昨日あたりから日本のメディアが報道し始めたのが、10月8日の安倍さんと胡さん温家宝さんとの訪中会談です。安倍さん自身が調整中であることを明らかにしたようですから、恐らくほぼ"本決まり"なのでしょう。

さて、日中首脳会談で日本のメディアが注目しそうなのは、"靖国問題"への言及でしょう。首相になる前の安倍さんは、自らのバレバレ参拝について、肯定も否定もしませんでした。首相になった後の安倍さんは、今後の参拝について一切語っていません。自国民に対してこうなのですから(もちろん対外的なメッセージ性は狙いのうちでしょうけど)、胡さんや温さんにどうこう話すことは無いように思えます。
きっと、日中首脳会談開催の日本側の条件は、中国側が"靖国問題"に言及しないこと、中国側の条件は、安倍さんが一定の期間、靖国神社にお参りには行かないこと、あたりなのではないでしょうか。

「日本に対しては歴史問題を永遠に言い続けなければならない」という江さんの、98年8月の発言が『江沢民文選』に載っているそうです。胡さんが江さんの影響下から完全に脱したとすれば、もしかしたらドラマチックな展開が待っているかもしれませんし、今後は首相の"靖国参拝"というイシューが日本側の外交カードになり得るかもしれません。
日本に居ると、ちょいと楽観的に考えてしまいがちですが....。
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by pandanokuni | 2006-10-02 17:55 | 政治ネタ
デイヴィッド・サンボーンの"Dream"と中国西部旅行と911
もう20年近く前の話ですが、デイヴィッド・サンボーン[David Sanborn](Wikipedia / はてなダイアリー)と日本国内5~6ヶ所のジャズ・フェスティバルのツアーを"一緒"に回ったことがありました。
"一緒"とは言え、駆け出しの広告マンだった私の役割は、スポンサー向けのテント張りや氷の調達。真夏の陽射しを避けるところすらない無い屋外特設会場での肉体労働でした。
そんな"パシリ"状態の私に対してすら、ジャズメンは気さくに接してくれました。顔見知りになると、音合わせの時にはステージから降りて私の準備するテントまでやってきて、すぐそばでサックスを奏でてくれたりもしました。
デイヴィッド・サンボーン・グループの出番はフェスティバルの一番最後。そして、いつもラストから2曲目が"Dream"("Change of Heart"と言うアルバムに収録されています)というバラッドでした。ステージの最中は、スポンサー商品のサンプリングやら接待ブースへの氷運びやらで汗だく、大忙しで、とてもゆっくりと演奏を聞く余裕など無い立場でしたが、この"Dream"の演奏が始まるころには、ようやく一段落、"Dream"の演奏が終わると、"客出し"つまり来場客のお見送りの準備を始めるという感じでした。
当時はブリティッシュ・ロックに傾倒していて、ジャズとかフュージョンにはあまり興味が無かった私でしたが、サンボーンと彼の"Dream"には、強い思い入れがありました。

先日、中国駐在の"卒業旅行"として、チベットのラサ(拉薩)から西蔵鉄路で青海省のゴルムド(格尓木)、更に長距離バスで敦煌、張液、蘭州を経て、青海湖へ至る、中国西部5,000Kmの旅に出かけてきました。この地域は、チベット仏教を信仰するチベット人やモンゴル人、イスラム教を信仰するウイグル人などが多く住み、化石資源や軍事施設も多いので、一部のエリアでは未だに公安当局が発行する「通行証」が無ければ外国人は通過すらできません。そして、ご存知の通り、信教や民族の伝統文化などをめぐって、いまなお多くの問題を抱えた地域でもあるわけです。

海抜3,000mから5,000mの高地は変化に富み、毎日12時間以上も列車やバスに揺られていても、目を閉じることすら惜しいくらいの風景が続きます。車窓に顔を貼り付けるようにして、美しい大地の演出を眺めていると、20年近く前に野外ジャズ・フェスティバルで聴いたサンボーンの"Dream"が蘇って来ました。
撮り貯めた映像をこの曲に合わせて編集してみましたので、お時間があればぜひご覧ください。

チベットについて言及した前回のエントリー(exbloge版)には、たくさんのご意見をいただきました。
そして、この地域の映像に添えたサンボーンの曲のタイトル、"Dream"の意味を考えてみました。
外国人のツーリスである私にしてみれば、素晴らしい風景の中で暮らす人たちと"争いごと"は遠い関係であってほしいと考えているのかもしれません。彼ら・彼女らの心の祈りが"争いごと"すら空虚なものにしてくれるのではないかと願ったりもしました。
そうした他者による理想とは別に、当事者の方々は、いまもなお安寧と言える状態では無いことも事実でしょう。他者による理想と当事者の現実のはざまの中に、この美しき高地が存在しているのでしょう。
"Dream"を中国語で"幻夢(Huan Meng / 日本語の"夢幻"に近いでしょうか)と訳しました....。

イラク戦争で無くなったアメリカ兵士の数は、5年前の9月11日にニューヨークのWTCで亡くなられた方を上回っているそうです。イラク戦争の"終結宣言"以降にイラク国内で亡くなられた方は、さらにその7倍以上にのぼるとか。
命の数を比較することじたい不謹慎ではありますが、人間の叡智をして解決する方法がほかに見つかるのではないかと信じたいと思います。人と人とが殺し合いをせずに共存できる時代がくることを願っています。

このエントリーが恐らく北京在住の身分としては最後になります。
中国当局のやり方が不適切であるならば、そのことをしっかり主張することこそ、この"ユニークな"隣国とうまく付き合っていくための近道であると信じています。
もちろん冷静に、決して感情的にならず....。そのためにも、この国のことをしっかり研究することも必要だと思います。

ショートムービー『西藏、敦煌、青海 The Dream - 幻夢-』
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by pandanokuni | 2006-09-12 00:46 | 政治ネタ
チベット人は”ふしあわせ”だろうか?
拉薩(ラサ)に行ってきました。2003年に次いで2度目のチベットです。
今回の旅行はチベットが主たる目的ではありませんでした。ことし7月に開通した、厳密には青海省の格尓木(ゴルム)からチベット自治区のラサまで延長された、青蔵鉄路(青海-西藏鉄道)の列車に乗ること、そして青海湖を見に行くことが主たる目的でした。

共産党が支配する現在の中国に批判的な方の多くは、"大量虐殺”を伴った"中国”のチベット支配と弾圧を、”犠牲者”の数では日中戦争以上ではないかとも言われる文化大革命や東トルキスタン問題などとともに”嫌いな”理由の一つにされています。
1947年アジア諸国会議にチベットは独立国家として代表を派遣しました。しかし、1950年、中華人民共和国の”人民解放軍"が東チベットに侵入、その後、数万の軍隊が駐留し、チベット人に圧力をかけ続けました。1959年にはチベット人による政府の解散を強要し、1965年に中華人民共和国のチベット自治区を成立させました。この前後の混乱期には、チベット人による民族蜂起が何度と無く起き、数多くのチベット人が亡くなり、或いは囚われの身となり、数万人のチベット人がインドなどに亡命しました。いまなお、主としてチベット仏教の宗教関係者が、中国当局に拘束され、或いは投獄されていると言われています。
中国当局によるチベット人への民族差別、ダライ・ラマ14世を正統とするチベット仏教に対する弾圧が、いま尚続いており、総じて”チベット問題”として国際社会から批難を受けたりしています。


b0047829_23551065.jpgラサの街は3年前と大きく変化していました。
3年前、1980年代のランクルがほとんどだったツーリスト向けのレンタカーは、北京の街を走っているのと同様の最新型の外国ブランド4WDに。
また、これは多くの地方都市でも言えることですが、空港のターミナルビルも新しくなっていました。3年前はタラップで飛行機を降りて徒歩で空港の小さな建物に向かったのですが、いまではブーディング・ブリッジが4つもある日本の地方空港顔負けの近代的なターミナルビルになりました。
空港からラサ市の中心に繋がる道路も見違えるように整備されました。新しく橋が架けられトンネルも造られたので、距離も時間もグンと短縮されました。
ポタラ宮広場も整備されました。国旗掲揚塔がいっそう立派になり、「西藏(チベット)和平解放碑」なるものができていました。チベット人の風習が温存されている(はずの)寺院や大昭寺を囲む八廓街は3年前と大きな変化がありませんでしたが、大昭寺の屋根の上からラサの古い街並みを見渡した時、”都市整備”のため壊されている建物のうえに五星旗がふてぶてしく翻っていたのが印象的でした。
青蔵鉄路の開通に伴い、ホテルやレストランの料金は軒並み値上がりしたようです。ツーリスト向けのホテルの宿泊料は、3年前の2倍くらいになってしまいました。"拝観料”は色垃寺が55RMB、大昭寺に至っては75RMBでした(ちなみにチベット人は無料とのこと)。3年前は20RMBくらいだったと記憶しています。


b0047829_23581329.jpgどうせ漢民族だけが儲けているんだろう、と思う方もいらっしゃると思います。
確かにラサには漢民族がたくさん居ます。四川省や陝西省(西安あたり)から移住してきたり、出稼ぎに来ている人たちによく出会います。ラサなど都市部では漢民族の”大量移民”によりチベット人はもはや”少数民族”だ、と言う指摘もあるようですが、ラサの人口の約半分はチベット人(チベット族)ということになっていますし、ツーリストとして行動する限り、この街で出会う人々の大半はチベット人のように見受けられました。

私が宿泊したホテルの従業員はほとんど全員チベット人でした。外国人向けのレストランやコーヒーショップでもチベット人の若い女の子が闊達な英語で対応してくれます。おみやげ屋さんの店員さんも、ほとんどがチベット人です。”観光化”されたとは言え、寺院で見かける”参拝客”もチベット人が多数派でした。自動車タクシーの運転手は大半が漢民族により占められているとのことでしたが、自転車タクシーの運ちゃんはほとんどがチベット人です。ちなみに、ラサ市内では自動車タクシーも自転車タクシーもほぼ同一料金ですから、自転車タクシーのほうが、利鞘が大きいのではないでしょうか。


b0047829_23591320.jpg青蔵鉄路の北京発着列車の食堂車で働くウエイトレスは、チベット人が中心だそうです。拉薩(ラサ)から格尓木(ゴルム)に至る車窓からの眺めは見事なものでした。ラサから数百キロ離れても線路沿いにはところどころにチベット人の集落が見受けられます。そうした田舎の集落であっても、電気が通っていて、携帯電話の電波が届いているようです。
チベット高原に生息する牛、”ヤク”を放牧するチベット人の親子が、微笑みながら列車に手を振ってくれました。

いっぽうで、ラサの街では北京よりも多いくらいの”公安関係者”をお見かけします。画一したユニフォームで余計そう見えるのかもしれませんが、チベット人の”公安関係者”はほとんど見かけることがありませんでした。きっと、相変わらず”お役人”の大半は漢民族なのでしょう。

バックパッカーが多く訪れるホテルで働くおばさん、欧米人ツーリストに人気のカフェレストランで働く女の子、自転車タクシーの運ちゃん、と3人のチベット人に、「いま幸せか」尋ねてみました。
3人の答えはそれぞれ一言で済むようなものではありませんでしたが、乱暴に整理してしまうと、3人とも「収入が増えたので、むかしより幸せ。」と言うことでした。

チベットはますます”観光化”され、外国人だけではなく中国国内からもほぼ自由にツーリストが訪れることができるようになりました。中国都市部が裕福になるにつれ、チベットに”落としていくお金”も多くなっていくでしょう。いまや”観光資源”となったチベット寺院には、いまなお修行を続ける僧侶たちがたくさんいて、たくさんのチベット人が日に日に参拝に訪れています。そして、その光景をいっそう多くの外国人や中国人が目の当たりにすることができるのです。
また、広大なチベット自治区のさまざまなところから拉薩(ラサ)や日客則(シガツェ)などの”観光都市”に、職と富を求めてチベット人がやってくるそうです。

インドのダラムサラに居られるダライ・ラマ14世のことを、いま尚自分たちの政治的リーダーだと考えているチベット人は如何ほど居るのでしょうか。もちろん、パンチェン・ラマ11世に対してはなお更では無いでしょうか。
“伝統文化”が政治的権力によって失われたというのは事実でしょう。或いは、“伝統文化”ですら時代とともに変化していくものだとすれば、それを受け入れる勇気も必要でしょうし、そうした流れに身を委ねることを批難する権利は誰にも無いのではないでしょうか。

「私は一介の僧です。つつましい比丘(ブッダダーサ/ Buddhadasa Bhikkhu)です。わたしの潜在意識の中では一介の僧という感覚がもっとも強いです。夢の中ですら私は自らをチベットの国王としてではなく一介の僧としてみています。」ダライ・ラマ14世は1990年『Dalai Lama Speaks』の中でこう述べられています。
“こころの自由”だけは脅かされること無く、少しずつかもしれませんが人々が豊かになっていくのであれば、そしてそのことを世界中の人たちが目の当たりに確認できるような状態が保たれるのであれば、チベット人もまた、ふしあわせでは無くなるのでは無いでしょうか….。
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by pandanokuni | 2006-08-26 23:44 | 政治ネタ
小泉さんの参拝、CCTVが異例の速さで"強烈抗議"
小泉さんは、8月15日、北京時間の6時50分までには参拝を終えたそうですが、その10分後、午前7時には中国中央電視台(CCTV)ニュース・チャンネルが速報として取り上げ、中国外務省の抗議コメントを繰り返し読み上げました。

新華社通信のウェブサイトでは、7時13分に参拝の写真入りで参拝の事実と中国外務省のコメントをアップしました。以下全文を拙訳にて引用します。
本日、日本の小泉純一郎首相が第2次世界大戦のA級戦犯を祀る靖国神社をまた参拝しました。中国政府は、日本の軍国主義の侵略戦争で被害を受けた国々の国民感情を傷つけ、日中関係の政治的基礎の筋道を破壊する行為に、強烈な抗議を示します。

靖国神社に祀られているA級戦犯は、日本軍国主義を発動し実施し、対外侵略を計画し指揮した人々であり、近代史上アジアと世界に甚大な災いをもたらした元凶です。小泉首相が国際社会やアジアの国々と日本の国民の関心と反対を無視し、戦争犯罪者の祀られている靖国神社を参拝したことは、国際正義への挑戦であり、人類の良知を踏みにじる行為です。

中国は日本軍国主義と対外侵略戦争の最大の被害国であり、中国国民は日本の中国侵略戦争の中で深刻な災難を受けました。こうした歴史を正確に認識し対処することが、戦後の日中関係を修復し発展させる政治的基礎であり、両国がともに未来に向かうための重要な前提でもあります。小泉首相は、歴史問題で継続的に中国国民の感情を傷つけてきただけではなく、国際社会の信頼を失い、また日本国民の信頼をも失い、日本の国家イメージと国益に損害を与えました。

日中が健全な関係を維持することは、両国の国民の根本的な利益に適うものであり、アジアと世界の平和と安定にも有益です。中国政府と人民は、友好的な日中関係を重視する政治家や多くの日本国民とともに、日中関係における3つの政治的文書を基礎として、「歴史を鑑に、未来を見据える」の精神に基づき、両国の平和共存、世代間の交流、利益をもたらす協力、共同発展、に力を尽くします。私たちは、日本各界の有識者が歴史の潮流に順応して、政治的障害を取り除く努力をし、日中関係が一日も早く正常な軌道に戻ることを、信じております。

"強烈抗議"ではありますが、内容としてはかなり"温厚"と言えるのではないでしょうか。
「A級戦犯は悪いけど、多くの日本人は悪くない。」と言う理論同様、「小泉さんは悪いけど、多くの日本国民は迷惑している。」と小泉さんへの個人攻撃を原則としてます。
そして、友好的な日中関係を重視する、日本の政治家や多くの国民、各界の有識者に、一緒に未来を築いていこう、と呼びかけています。

過ぎたことより、これからのことに期待したい、と言うことですね。中国当局内部では、ここ数ヶ月の間、この日への対応について、あれこれと綱の引っ張り合いをしていたと思います。それで、こうした"温厚"な抗議コメントに落ち着いたのでしょう。
安倍さんが首相に選ばれ、参拝を続けるようであると、日本は、このコメントで中国が期待するようにはならないかもしれません。中国指導部の中の対日強硬派の声が大きくならないように願いたいものです....。
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by pandanokuni | 2006-08-15 09:37 | 政治ネタ
首相の靖国参拝。最後だから/一回だけなら、まいっかぁ? でも....
日本人であっても、靖国神社について、正確に説明できる人は少ないのではないでしょうか?
東京に住んでいた頃、何度かお参りに行きました。過去の戦争で日本のために亡くなられた方を悼む気持ちというより、自分や家族が幸せで仕事がうまく行きますように、と祈っていたのだと思います。その頃の私にとって、靖国神社は明治神宮や護国神社や天神さまやお稲荷さまと、大きな違いはありませんでした。

中国で仕事をするようになって、靖国神社について、少し知っておく必要を感じました。靖国神社のウェブサイトを何度も訪ねました(現時点で私の接続環境からは繋がりません...。たぶん当局が"アク禁"してるのかもしれません。アク禁しないほうが、当局にとっても良いのではと思うのですが....。)小林よしのりさんを皮切りに、三浦朱門さん、上坂冬子さん、高橋哲哉さんの書かれた書物を読んだりしました。出張で東京に戻ったのときに、遊就館を見学することもできました。
必要が生じたときは、中国の人たちに、できるだけ客観的に靖国神社のことを説明してきたつもりです。

小泉さんが公約を守るために、最後のチャンスである8月15日の靖国神社にお参りに行くとか、靖国参拝を支持する安倍さんが次期首相に当確だとか、なかなか思惑通りにならない日本の状況に、中国当局の混乱と焦りが垣間見られます。

次期首相候補の官房長官・安倍さんの靖国参拝が発覚すると、中国外務省スポークス・パーソンの秦剛さんは、8月4日、
日本の指導者は第2次世界大戦のA級戦犯が祀られている靖国神社参拝を止めて、日中関係の正常な発展を阻害する政治的障壁を取り除く実際の行動をとることが、両国国民共同の願いであり、両国の基本的利益に適うものです。日本と中国が一つの方向で、両国関係を一日も早く正常な発展の軌道に戻るよう希望します。
というコメントを出しました。両国国民ってとこが、いいですねぇ....。

8月10日は中国全土で、"感情的な嫌日家"とも言える江沢民さんの論文や演説などを集めた『江沢民文選』が発売され、CCTVの19時のニュース『新聞聯播』ではトップで取り上げ、全国の書店で平積みされる光景や工事現場の労働者までが待ちに待ったとばかりに読みふけるシーンなどが紹介されました。この書物の中で、江沢民さんは日本に対して「歴史問題、永遠に言い続けよ」と言っているそうです(Yomiuri Online)。

8月13日、共同通信は複数の日中、日韓関係筋からの情報として、中国と韓国が首相の靖国参拝を1回に限り容認すると言うニュースを配信しました(gooニュースの転載記事)。

"火の無いところに煙は立たない"ということを信じれば、中国の指導者の一部はきっとこのような考えを持っているのでしょう。安倍さんが日本の首相になる可能性が高い現状で、「いつまでも"靖国問題"に固執していては中国にとってマイナスの影響が大きい。」などと冷静に考えている人たちだって居るってことでしょう。

ところが、と言うか、当然と言うか、中国外務省は即座に共同通信の報道を否定しました。
共同通信の中国側が日本の「次期首相の靖国神社参拝を一回限り容認する意向」の報道はまったく事実無根である。
中国側は日本の指導者が第2次大戦のA級戦犯が合祀されている靖国神社参拝問題における立場は明確的で、いささかも変わっていない。われわれは中日関係の正常な発展を阻害する政治的障害を一日も早く取り除かれ、中日両国関係が正常な発展の軌道に戻るよう希望する。
このコメントは、在日本中国大使館のウェブサイトに掲載されましたが、私が調べた限り8月14日の時点で中国外務省のウェブサイトをはじめ、中国国内メディアでは報道されていないようです。

もちろん、新華社通信のウェブサイト「新華網」は、「日本はまだ民主主義国家なのか」と言う環球時報の記事を引用し、「小泉さんの靖国参拝は日中関係を阻害する」と言う"鬼"の文字入りバナー付き(ただし、中国語の"鬼"には亡霊の意味もあります)の特集ページを用意して、小泉さんの参拝を警戒しています。
私はかの国に"民主主義国家か"などと問われたく無い日本人の一人ですが、日本の世論調査の結果の多くが、小泉さんの靖国参拝に"反対"が"賛成"の割合より多いようですから、ちょいとハッとする見出しではあります。

さて日本では、独自の文化だから、風習だから、心の問題だから、よその国に説明する必要も、どうこう言われる筋合いも無い、とおっしゃっている方々がたくさんいらっしゃるようです。

例えば、教育方針から子どもを学校に通わせない親がいるとします。学校にも来ず、外でも見かけない子どもを心配して、ご近所の人たちや学校の先生や、或いは教員委員や民生委員が、このお家を訪ね、親に説明を求めるでしょう、日本は良い国ですから....。この時、「ウチの教育方針だから、家庭の問題だから、自分の子どものことだから、干渉しないで欲しい、放っておいて欲しい」と何の説明もせずに追い返したとしたら、いかがなものでしょう?
もし、この親が信念を以って自分の子どもに独自の教育を施しているのであれば、しっかり説明してご近所や学校の先生を安心させるほうが良いのではないでしょうか。親の義務として学校に通わせるべきだ、とか、子どもが可哀相だ、とか批難する人たちがいたとしても、彼らが納得するまで説明したほうが良いのではないでしょうか?さもなくば、子どもを虐待しているのではないか、とか、あの家庭はヘンだとか、思われて、コミュニティから相手にされなくなるでしょう。町内会の寄り合いで、尤もらしい意見を述べても、聞き入れてもらえなくなっちゃうのではないでしょうか?

ご近所が関心を持っていることなのですから、引きこもるのは良くないと思います。もっと丁寧に説明したほうが良いと思います。共同通信の勇み足報道が示唆するように、きっと根回しだって不可能では無いように思えるのですがね....。
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by pandanokuni | 2006-08-14 23:04 | 政治ネタ