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[北京オリンピック観戦] 鳥の巣は"便衣兵"の巣窟!?
生まれて初めて、世界新記録更新の瞬間を目の当たりにすることができました。
8月20日、北京の中国国家競技場(通称:鳥の巣)でオリンピックの陸上競技を観戦したのです。ご存知の通り、この日に行われた男子200メートルでジャマイカのウサイン・ボルト選手が19秒30で世界記録を更新しました。とあるオリンピック・スポンサーからいただいたチケットは、トラックゴールに近い1階スタンドの17列目で、ゴールを切りそのままトラックに倒れこんみ、起き上がってガッツポーズをとるボルトを目の前でみることができました。
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さて、オリンピック観戦記は他のブログに譲ることにして、この日"鳥の巣"に出かけて気付いたことをいくつか挙げてみることにします。

[北京の交通]
ナンバープレートの奇数・偶数による流入規制の効果もあり、主要道路のクルマの流れはスムースです。外側の一車線はオリンピック・レーンに指定され、関係車両以外の通行が見つかると2,000RMB(約3万円)の罰金と下手すると拘束が待っているので、さすがに空いています。バス専用レーンの取り締まりも強化されていますから、一般車両が通行できるのは、片側4車線の道路であっても、2車線ほど。ですから、一部では渋滞します。けれども、交通規制前の渋滞ほど酷くない、と言うことです。
北京市民の中では、奇数日は奇数ナンバー、偶数日は偶数ナンバーのみ通行可能と言う、この交通規制をパラリンピック終了後も継続して欲しい、と言う意見が増えているそうです。自動車を運転しない市民はもちろんのこと、いままでクルマで通勤していて、この交通規制にぶつぶつ言っていた北京のスタッフまでが、そんなことを言っていました。
自動車による渋滞が緩和された分、公共交通機関は大変な混雑です。地下鉄は路線にも拠りますが始発から終電まですし詰め状態。バスもかなりの混雑です。
また、オリンピック会場へのアクセスに公共交通機関を勧めているわりに、インフォメーションが不足している感じがしました。
主要会場へはオリンピック専用バスが運行されていますが、運行系統が複雑で、地下鉄駅など乗り換え地点がどこなのか分かりにくい感じを受けました。また鳥の巣最寄の地下鉄駅もバス乗り場も、競技終了後はたいへん混み合うため、通常の路線バスのバス停に向かう観戦者も多いのですが、バス停の路線表示は英語になっていないので、海外からの観戦者には不親切な感じです。

[ダフ屋さん]
鳥の巣に向かう路上には、いたるところにダフ屋さんがいました。
不思議なことに、鳥の巣周辺の路上には、制服警察官や武装警察などのイカツい人たちがほとんど姿を現していないのです。
私は04年にサッカー・アジアカップの決勝戦(日本対中国)を北京の工人体育場で観戦しましたが、このときは周辺道路に既に多くの警察官や武装警察が、完全武装で配置されていました。北京オリンピックでもメディアでしつこいほど会場警備のイカツさを報道しているので、凄いことになっているんだろう、と思って出かけましたが、鳥の巣の周辺道路には装甲車が配備されていることも無ければ、制服の武装警察が盾を持って並んでいることも見かけませんでした。
そんなわけか、ダフ屋さんも鳥の巣のゲート前で堂々と商売をしておりました。
私は競技開始の19時を30分ほど過ぎてから到着したのですが、定価800RMBのチケットを500RMBで売っていました。この日は劉翔が出るはずだった男子110メートル・ハードルの準決勝があったので、チケットがダブついてしまったのでしょう。翌日のチケットは、1,000RMBとか2,000RMBとかかなり強気で売っていましたが。
買い手の多くは、欧米人でした。どこかに隠れていた公安か警察官が、取引成立と同時に飛び出してきて捕まえるのかと、ドキドキしながらみていましたが、何の取締りもありませんでした。
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中央の白シャツ青年がダフ屋さん


[安全検査]
前述の通り、競技開始後に会場に到着したためか、長い行列はありませんでした。ライターと飲食物は持ち込めない、と事前に掲示があります。大きな荷物を持った人の列とそうで無い列に分けられ、最初に偽物を判別する装置によってチケットをチェックされます。次いで、荷物をX線に通して、ゲートをくぐる、と言う手順でした。
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安全検査ゲート。イカツい制服は目に付かない...


横断幕やメッセージ性の高い掲示物を没収された、と言う日本の報道があったので、かばんの中身をいちいちチェックされるのかと思っていましたが、金属探知機を通すだけでした。身体検査のゲートも、ベルトのバックルや指輪・ピアスでもピ・ピ・ピと警報がなってしまう中国の空港より、厳しはありませんでした。
この程度の検査ならば、"Free Tibet"のバナーくらい、容易に競技場に持ち込める感じです。
しかも驚いたことに、この"安全検査"エリアにも、制服の警察や武装警察の姿が無かったことです。安全検査を行っているのは、お馴染みになったブルーとホワイトのスポーツ・ウェアを身にまとった"ボランティア"の人たち。私が通過したレーンでは、どうみても学生としか思えない、女の子が数人、ソフトな対応をしてくれました。イカツい公安や警察官の姿を目を凝らして探しましたが、見つけることはできませんでした。
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安全検査の"ボランティア"の女の子とチケット判別装置


[スタジアム]
中国の国民的ヒーロー劉翔が出場しないからでしょうか、観客席は7~8割くらいの入りでした。それでも、壮大なスタンドはほぼ観客で埋め尽くされているように見え、圧倒される雰囲気でした。
想定外だったのは、鳥の巣周辺の道路から指定されたスタジアムのシートに座るまで、制服の警察官や武装警察などイカツい警備の人たちの姿を一切見つけることができなかったことです。
指定された入場口でチケットのもぎりがありましたが、ここも例の"ボランティア"スポーツ・ウェアを着た学生と思しき人たちでした。指定通路でシートを案内する人たちもそうでした。1階スタンドの各通路には、2~3名の"スタッフ"が観客のほうを向いて立っているのですが、これもブルーとホワイトの"ボランティア"スポーツ・ウェアを着た人たちです。
とにかく、こんなにもソフトな警備を行っているとは思いもしませんでした。
もちろん、中国のことですから、そんな甘くは無いはずです。私が観戦するスタンドにも、きっとたくさんの公安や警察や武装警察が隠れていたのでしょう。少なくとも私の感じた限り、通路に立っている"ボランティア"スポーツ・ウェアの"スタッフ"は、武装警察官か何かでしょう。大学生と変わらないくらいの年齢ですが、身のこなしが違いました。トラックのほうを振り返ることなく、常にスタンドの観客のほうを向いているのです。穏やかな表情を心がけていたようですが、観客を常に監視してる雰囲気がありました。
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お馴染み"ボランティア"スポーツ・ウェア姿の(恐らく)武装警察官


きっと、通路に立っている"スタッフ"の周囲には、観客にまぎれた"応援部隊"がいて、"スタッフ"が不穏な動きを察知したら"応援部隊"に合図して、未然に取り押さえるようになっているのではないでしょうか。
いっぽう、学生の"ボランティア"と思しき人たちは、観客とともに競技に見入ったり、ひと気の無いところでだらしなく休憩をとっていたり、と通路に立っている"ボランティア"に身を扮したプロの武装警察とは、明らかに緊張感の度合いが違いました。

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業務をサボって観戦する"ボランティア"スタッフ



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すっかり疲れてゲート付近で休憩中の"ボランティア"


それにしても、イカツい制服警備による"抑止力"が無いので、いたずらごころに"Free Tibet"のバナーでも掲げてみたい衝動に駆られてしまいました。きっと立ち上がった瞬間に、観客にまぎれていた私服武装警察官によって、取り押さえられてしまうのでしょうね。そして、競技観戦に夢中の周りの観客が気付かないうちに、どこかに連れて行かれるのでしょう....。
なお、スタンドの最前列には、警察の制服でも武装警察の制服でもありませんが、明らかに警備員とわかる”制服"を着た警備員が配置されていました。これは日本のドームコンサートでも配置されるシミズスポーツの警備員みたいな感じで、差ほど違和感や威圧感はありませんでした。


オリンピック開幕前は、かなりの緊張感があった北京ですが、開幕して10日以上経ってしまい、緩んでしまったのでしょうか。北京市内の状況について、ある北京市民は馴れてしまったのだ、と言っていました。相変わらず市内の至るところに、"制服"警察官は配置されています。でも、"制服"の人数は明らかに減らされています。
社区(町内会)のおばちゃん、おじちゃんたちが、"ボランティア"ということでオリンピック・スポンサーが提供した真っ赤なポロシャツを着て、市内を歩き回っています。表向きは「道案内」らしいのですが、英語が通じるような人はごく少数です。こうした"ボランティア"のおばちゃん、おじちゃんの中に、公安や武装警察が混じっている、と知人の北京市民は言っていました。

海外メディアの批判をかわし、和やかな雰囲気を作り出そうと、ソフトな警備を心がけている当局の姿勢が強く窺われました。その裏を返せば、北京市内にも鳥の巣スタジアムにも、その他の競技会場にも、たくさんの"便衣兵"(制服を着ていない公安、警察、武装警察、人民解放軍の人たち)が入り込んでいて、しっかりと監視と警備をしている、と言うことなのでしょう。

思い起こせば、世界を駆け抜けた北京オリンピックの聖火リレーで、聖火を"守った"人たちこそ、"ボランティア"と呼ばれ、いま北京オリンピックの会場で"ボランティア"をしている人たちと、同じブルーとホワイトのスポーツ・ウェアを身にまとっていたわけです。
聖火リレーの頃は、聖火を守る"ボランティア"がほんとの素人ボランティアだと信じた人は、居なかったはずです。妨害者から聖火を"守る"身のこなしは、どうみてもプロですし、厳しく怪しい奴らだという印象を抱いた方が多かったはずです。
でも、いま北京では、例のブルーとホワイトのスポーツ・ウェアを着た"ボランティア"の人たちが至るところに居るわけです。そして、多くの人たちは、親切な"ボランティア"だと疑っていません。もちろん、その多くは親切なボランティアなのですが、中には聖火リレーで聖火を"守った"ような人たちも混じっているわけなのです。
あのウェアのイメージを変えてしまった、中国当局の戦略は見事なものだと言えるでしょう。
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by pandanokuni | 2008-08-23 02:09 | 社会ネタ
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