毒入り餃子報道で顕在化する日本(メディア)の矛盾。
中国では公安当局もしっかり春節(旧正月)休みを満喫していたのでしょうが、13日が仕事始め。そろそろ中国側のストーリーも明らかになることでしょう。
労働争議系なら福田さんに一本、"反日不満分子系"なら胡錦濤さんに一本という感じでしょうが、私の仲間うちではCIA陰謀説まで飛び出しています。この事件で誰が(どの国が)一番得をしたのか、と言う線から推理すると、このCIA陰謀説もまんざらではありませんね。欧米系のたばこ会社をM&Aして日本の食品系メーカーとしては世界的に台頭しつつあるJT、東欧共産主義崩壊後の今となっては場違いとも言える生活協同組合のユートピア思想、オリンピックを目前にして意気揚々の中国、アメリカの一部保守層に広がるChina Freeの動き....。

それはさておき、ここ10日ほど日本メディアによる毒入り餃子事件の関連報道を目にしていると、日本の社会や経済や政治が抱える根本問題を置き去りにしているとしか思えません。そして、どのくらいの割合の日本人がこうした報道に共感を得ているのかも疑問です。
ちょっと長くなると思いますが、毒入り餃子報道における日本の或いは日本メディアの自己矛盾を私なりに書いてみたいと思います。


(1)今はまだ選べるからいいけど....。

そもそも日本が食糧自給率を下げることになった要因はアメリカの占領政策だったと言えるでしょう。
過剰気味の小麦や大豆の売り先として、敗戦国"日本"に目をつけたのです。学校給食にパン食を導入したり、納豆や豆腐まで安い米国産大豆にしたり。
食の欧米化により、米が生産過剰となり、米作農家は減反を余儀なくされました。輸入障壁が低くなり、供給元は"利ざや"を消費者は"安さ"を求めることによって、世界中から食料をかき集めて、いまや6割以上を国外に依存するという有様です。
それでも今はまだ選ぶことができます。日本で生産可能なものは"少し割高でも"日本産を買うこともできます。怪しげな中国産を拒絶することもできます。
でも良く考えてみなければなりません。外国はいつまでも日本に食糧を売り続けてくれるでしょうか?
例えば、かの中国。貧富の差が拡大しているとメディアは伝えているけれど、一部の貧困層を除いて総体的に豊かになっているのは事実だと思います。13億とは言わずとも、その半分の6億人がより豊かな食生活を望むなら、内1億人がハイエンドの食料を日本人と同じ値段で買い漁るようになったら、もう日本に売る必要もなくなるでしょう。
日本経済がこのまま萎縮を続けるなら、中国産でもいいから、とにかく食べ物を譲ってくれ、ということになるかも知れないでしょう....。


(2)「少々高くても国産」は格差社会を前提にしての発言?

そもそもテレビのニュースショウを見ていると、「少々高くても国産を買うようにしています」と言う主婦の声を日本国民の総意の如く垂れ流しているように思えます。
いっぽうで日本の大衆メディアの多くは、ここ数年来顕著になっているという"格差社会"について、批判的な報道を行っています。
さ、100円や200円高くても、5割増しになっても、全日本国民は国産食料品を選ぶことができるのでしょうか?
中国製品を避けることによるコスト高で介護老人ホームや学校の給食に皺寄せが来ている、と言う報道もありました。いや、もっとギリギリの暮らしをしている人たちだって多いはずです。
「少々不安でも(安い)輸入品を買うしかありません」と嘆いている日本国民はいないのでしょうか、そうした国民の嘆きをメディアはなぜ伝えないのでしょうか....。


(3)手作り餃子と少子化対策は矛盾しないの?

毒入り餃子事件の報道で、「餃子くらい家庭で手作りにしなさい!!」みたいな発言をするテレビ人が多かったせいか、餃子の具材が売れているそうです。これまたニュースショウが得意げに報道してますけど。
子どものお弁当に冷凍食品を控える動きさえ、これぞ日本のオッカサンみたいに賞賛。
でもね、出来合いの餃子を焼くのと餃子を手作りで準備するので、遺失時間価値を比較してみなければなりません。年5,000時間働くとして、年収1,000万円の人なら時給5,000円、年収300万円の人なら時給1,500円。大雑把に言うなら手作り餃子に1時間かかるとして2,000円の工賃になります。1,000万人が月に1回餃子を手作りするなら、年間2,400億円の目に見えない経済的損失を被ることと同じでしょう。
女性だけが餃子を作るとは申しませんが、働く女性の負担を軽減することで少子化を食い止めなければならない日本国の課題の解決と、手作り餃子の推奨はいささか矛盾するように思えてしまいます。
共稼ぎのお母さんが毎朝お子さまのお弁当の支度をするのは大変な負担です。お弁当のおかずは冷凍食品なんかやめて、手作りにしましょうなんて世論が形成されるのは、ほんと気の毒に思えちゃうのです。

推測の域を脱しませんが、経済的に裕福とはいえない家庭だから共稼ぎする、時間もお財布も余裕の無い奥さんが、手間が省けて比較的安価な冷凍餃子を利用する。これって責められることなのでしょうか?
こういうシチュエーションが多いから、冷凍食品の需要も多いのでしょ....。


(4)日本ブランドと日本製品。

トヨタやニッサンやユニクロやソニーやパナソニックだからといって日本製品とは限らない、これはもう常識になっていますね。中国で組み立てられようが、タイやマレーシアで製造されようが、日本のブランドだから安心だ、というのが世界的な日本ブランド・シンパの趨勢と言えるでしょう。ブランドとはいわば品質管理の象徴なのですから。
ところが、数年前の中国では日本ブランドと日本製品を明確に区別する消費行動がありました。
同じトヨタ・ブランドのクルマでも、日本製造の輸入車と中国組み立てのものでは、価格に数倍の違いがあっても、日本製造のほうの人気が高かったのです。同じソニーのデジカメでも、日本からの並行輸入品のほうが中国製造のものより人気が高かったのです。だから、中国でも同じスペックの製品が販売されているにも拘わらず、秋葉原まで買いに来たりするのです。ま、今となっては秋葉原で売られているソニーもキヤノンも中国製造だったりするので、がっかりして何も買わずに帰ってしまう中国人観光客も多いらしいのですが。

なぜ中国人は日本ブランドでも中国製造品を忌み嫌ったのでしょうか?
それは自分たちが中国ではどんな風に製造しているか、品質管理しているか、想像がついたからです。「オレたちと同じ中国人が作っているんだから、いくら日本ブランドと言ってもたかが知れるな」くらいに思っていたのです。つまり、つい最近までの中国人は中国人の手で製造されたものを信頼していなかったわけです。
いまでも、こうした傾向は残っていますが、ことクルマやエレクトロニクス領域においては日本ブランドの信頼性が高まったので、中国製造だろうが大丈夫だろう、と言う方向になりつつあります。つまり、日本ブランドのクルマや電機製品は中国製造であっても安心できそう、と言う世界の趨勢に近づいてきたわけです。

これは尊敬すべき日本ブランドの並ならぬ努力があったからに他ありません。
トヨタなど部品供給元まで日本から連れてくるくらいの神経質ぶりですが、信頼に値する日本ブランドは中国の委託生産先での自社の品質管理担当者を常駐させるなどして、常に品質管理に気を遣っているのです(9月10日付けThe Wall Steet Journal アジア版では毒入り餃子事件におけるJTフードの対応をトヨタやユニクロの中国における製造管理体制と比較して論評しています)。
ヒトのなす業ですから万全なことはないでしょうが、トラブルが発生してもブランドの責任で解決を目指しているのです。
日本企業は製造の工程すら海外に移しているのですから、品質管理こそブランド価値として維持しなければならない要と言えるでしょう。

中国製の加工食品でも、池袋北口の怪しげな華僑食品店で買うのと、JTフーズなりCOOPなりの日本ブランドを信頼して買うのとでは、消費者心理に大きな差異があるはずです。
双日なのかJTなのかCOOPなのか分からないですが、なぜ製造現場に品質管理担当者を常駐させていなかったのでしょうか?日本から2人派遣したとして、餃子1袋に10円のコストも乗らないでしょうに。せめて監視カメラの映像を日本でも遠隔でモニタできるようにしておくとか。
日本人と中国人では労働やモノづくりに対する考え方が違うのです。日本ブランドを貼り付けて売ろうとするなら、品質管理体制など、それなりの覚悟は必要でしょう。こうした、日本側で対策可能な再発防止策に繋がるような問題点について、日本メディアはなぜ積極的に取り上げようとしないのでしょうか。

商品を右から左へ流すだけの昔風の商社商売を続けていたのでは、品質管理力て持ち堪えている日本ブランドすら危なくなるでしょう....。
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by pandanokuni | 2008-02-12 02:08 | 社会ネタ
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