これぞ『和諧社会』!?娘と妻とメディアが支える夫の性転換手術。
北京に住んでいた頃には、さほど気に掛けてなかった中国の社会ネタですが、日本で勝手に深読みすると面白いものですね.....。


b0047829_16584374.jpg「父親の性転換手術に付き添う娘」(CCTV.com=瀋陽晩報より)
ひと月ほど前、瀋陽の杏林美容整形病院に二人連れの不可解な患者がやってきました。22歳の娘が父親の性転換手術をお願いしに来たのです。チェンさんという、この49歳のは瀋陽郊外で農業をしながら、妻と娘二人で暮らしていました。
チェンさんは幼い頃から男性と一緒にいることが苦手でした。いまの奥さんとフツーに結婚し、二人の娘をもうけました。奥さんが三人目を妊娠したときに検査で男児と分かったのですが、チェンさんは「男の子は嫌だ!!」と奥さんに泣きつき堕胎したそうです。
その後、チェンさんの話し方はどんどんオンナっぽくなっていき、オンナ物の服や化粧品を好むようになり、銭湯の男風呂に入るのが恥ずかしくて嫌になり、夫婦の性生活もなくなってしまいました。
「オンナになりたい」と願うようになった夫に、奥さんは冷たく当たりました。いたたまれなくなったチェンさんは首吊り自殺を試みます。本気としか思えない夫の行動に、奥さんも夫のことを理解してあげられるようになりました。外で働く奥さんを洗濯や食事の準備をして待っているオバサン姿の夫を奥さんは「お姉さん」と呼ぶようになり、二人の娘たちもこうした生活を受け入れられるようになりました。
娘が成長するにつれ、チェンさんは他の人に知れたら白い眼で見られかねない自分の境遇を嘆くことが多くなり、「早く本当のオンナになりたい」と思い詰めるようになりました。そして、遂には"猫いらず"を飲んで二度目の自殺を図ったのす。絶望の渕にあったチェンさんに奥さんは「お姉さん、死んじゃダメよ。私や二人の娘はどうなるの?」と励ましたのです。
気を取り直したチェンさんは、「これはもう性転換手術を受けて、本当のオンナになるしかない」と決意しました。「手術してオンナになってからも、私を妹として一生大切にしてくれるなら...」と奥さんも同意。家を担保に銀行から手術費用を借金して、下の娘とともに病院にやってきたのです。
日本なら"ワイドショー"のひまネタでしょうが、この話題、中国の大衆向けの夕刊紙だけではなく、"権威ある"CCTVや新華社通信までが大きく取り上げているからちょっと不思議です。


b0047829_1659190.jpgちなみに、新華社のウェブサイトの見出し「ママが離婚しなくて済むように、パパを性転換手術に連れて行く娘」
記事では、家庭の調和を保つために性転換手術に理解を示した家族を称えいます。「30年も連れ添った妻と離婚したくは無かったから」と性転換の理由を語るチェンさんって????とか思っちゃうのですが、娘たちとも友達関係で居られるようですし、めでたしめでたし、と言った感じです。
さすがに「法律的にはバツが悪い」と言う弁護士の見解も載せてありますが、「性転換は社会を混乱させるものではない」と言う社会学者のコメントも載せてあり、非常に好意的な記事になっています。

2年前、胡錦濤さんは『和諧社会』(参考:現代中国ライブラリィ)というスローガンを打ち出しました。「和諧」は「調和のとれた」くらいの意味です。素直に解釈するなら、経済的格差(貧富の差)が縮まれば調和のとれた社会になっていきますし、お役人さんが賄賂で私腹を肥やすことなく人民のためにきちんとサービスを提供すれば調和のとれた社会になっていく、と言うことでしょう。「様々な矛盾により生じた問題を解決し、築かれた安定した社会」が『和諧社会』なのです。
陳良宇さんが"お縄"になってから『和諧社会』というこのスローガンがいっそう声高に叫ばれるようになった感じを受けます。10月中旬に開催された中国共産党第16期中央委員会第6回全体会議(第16期6中全会)では、「中国共産党中央委員会の社会主義調和社会の建設に関する若干の重大問題についての決定」を採択しました。"上海閥駆逐"とともに、自分の提唱するスローガンの浸透を図ろうとする胡錦濤さんの攻めの姿勢を感じてしまいます。

こうした政治力学のコンテクストで拡大解釈すると、性転換のこのニュースさえも『和諧社会』建設運動の一環として活用されているのではないか、などと疑いたくなってしまいます。
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by pandanokuni | 2006-11-16 16:59 | 社会ネタ
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