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これぞ日本のメディア!北の将軍様を追う北京の記者たち。
北の将軍様が中国にやってきたらしいと言う情報が入ってから、北京在住の日本のメディア・ピープルは大忙しの様相です。知人のカメラマンは上海に飛び、記者は広東に向かい、或いは広東から北京に戻るはずだから北京で張り込みなどなど。どの大手メディアも横並びで金正日特別取材体制を敷いています。
でも、良く考えてみてください。一生懸命、彼の所在を追ったとして、金正日さんが日本のメディアのインタビューなどに答えてくれる可能性はほぼゼロでしょう。拉致問題について"囲み取材"でもできると思っているのでしょうか。
取材に出られた皆さんも、せいぜい"ナマキム"を映像におさえられるかどうかだと思っているのではないでしょうか。たしかに最近の"ナマキム"の映像は少ないので、うまく撮影できれば、それなりの報道価値はあるのかもしれません。ただ私の知る限り、日本メディアの金さん所在情報源も似たり寄ったりで限られていて、結局のところ各社とも目的地が一緒のグループ・ツアーをしているようですから、1社だけ希少映像を"抜く"可能性は極めて少ないのではないでしょうか。ご尊顔を拝むチャンスが到来しても、きっとカメラのアングル勝負くらいになるのではないでしょうか。

現場のメディア・ピープルの皆さんは、日本からの指示で取材に赴いている場合がほとんどですから、とりあえずお疲れ様、ってことにしておきましょう。受け手が求める(はずの)ニュースだからこそ、日本のメディアは将軍様を追わなければならないのでしょう。
信憑性はともかくとして、「金総書記は西側に政治亡命?」(The Sekai Nippo)や「Kim Jong Il not in China(金正日は中国に居ないよ~ん)」(Interfax China)のような記事のほうが、アテンションを引くのではないかと思うのですが、日本の大手メディアがこの種の特ダネをゲットする可能性は極めて少ないでしょう。

ところで、産経新聞の古森さんも著書「北京報道七〇〇日」の中で、「取材活動に対して、中国当局による様々な圧力を日常的に感じる」と述べられていますが、北京在住のメディア・ピープルの多くは日常的にビビッているようです。
先日、中国が誇るスポークスマン孔泉さんが、日本メディアの中国報道への圧力とも解釈される発言をしてから、なおさらでしょう(そういえば、この発言をした10日に孔泉さんは、日本の豪雪被害に対してお見舞いの追加コメントを出したようなので、一応ご紹介しておきます)。

私には、中国当局が外国メディアの取材活動に対して何らかの圧力をかけたり干渉をしている、ということを否定するつもりは毛頭ありません。
だからこそ、そうした前提のもとでも、スクープ情報を獲得することができるような取材体制を整えることが、重要なのではないかと考えるのです。
日本の大手メディアの場合、社員記者を北京に送り込んでいます。報道記者として登録させられ、プレス・ビザを発行され、オフィスも現地スタッフも(少し前までは住居も)中国当局が指定或いは許可しないとNGです。それでどんな特典がついてくるかというと、中国当局のプレス・コンファレンスに参加できるとか、その程度です。
公式発表を堂々と聞く権利と質問する権利は得られるのですが、ルールを破ると制裁を受けたり、追放されたりする点で、中国でのプレス登録は日本の記者クラブに極めて似ているように私には思えてしまいます。国家権力と親睦団体の内規という違いを指摘されれば、それまでですが....

欧米のメディアは、たくさんの"特約記者"を中国に送り込んでいます。
私の知人の中国系アメリカ人もフリー・ジャーナリストで、WSJやCNNの"特約記者"をやっていました(コロコロ名刺が変わるのが中国系だなぁ、とは思っていますが)。彼の場合、プレス・ビザで滞在しているわけではないので、中国当局のプレス・コンファレンスには参加できません。その代わり比較的自由な取材活動が可能です。3年前のSARS(新型肺炎)のときは、"監視付き"のメディア・ピープルでは困難な取材を敢行し、スクープを連発しましたが、最後には中国当局に拘束され、一週間ほど音信不通になりました。幸いすぐに"釈放"されたのですが、その後は当局の"監視付き"と言う意識のため突っ込んだ取材は控えざるを得ない状況になりましたが、経済記者への一時的転向に成功し、失業せずに"ほとぼり"が冷めるのを待っているそうです。

北京にもフリーのジャーナリストの方がいらっしゃって、日本のメディアに情報を提供していますが、編集デスクからの依頼テーマによる取材活動が中心のようです。欧米メディアの"特約記者"は、本社からの指示ではなく、ほとんどの場合、独自の視点で取材活動を行うそうです。"拘束"や"国外追放"などリスクが高い分、待遇もなかなかのようです。送稿した記事がどう扱われるかは、最終的には日本と同様に編集デスクの判断によるのですが、日本の大手メディアよりは"独自の情報"を掲載しやすい取材体制を敷いてるなぁと思います。
もちろん、欧米メディアもプレス・ビザで中国当局公式発表会の参加と質疑"特権"を持った記者が"主流”ではあるのですが、フリージャーナリストや"特約記者"への期待は、日本の大手メディアより大きいようです。

数年前の話ですが、北京のヘアサロンに突然、金正男さんがやってきて、知人の日本人美容師がヘアカットして差し上げたそうです。お父さまと違って雑談も嗜まれたそうで....。当時、日本の大手メディア"記者団"は、北京空港で"囲み取材"に成功して、メールまでいただいたらしいのですが、この美容師の貴公子様の独自ネタには敵いません。せめて週刊誌ネタくらいにして欲しかったなぁと思ったものです。
北の将軍様のオッカケをしている日本の大手メディアの"記者団"は、果たしてどんな成果を出してくれるのでしょうか。
そして日本の受け手の皆さんは、黒塗りの車列の中からガラス越しで本人と確認できるかどうか分からないくらいの将軍様のご尊顔を、ほんとうに楽しみに待っているのでしょうか......
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by pandanokuni | 2006-01-14 05:12 | 社会ネタ
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