中国メディア「10大国際人物」にマイケル・ムーア
北京市の若者を中心に多くの読者をもつ日刊紙「北京青年報」と、日本では「人民日報」に翳んでしまっていますが、中国ではそれなりに存在感のある全国紙「光明日報」が共同で選出した2004年の十大国際人物に、マイケル・ムーアが選出されたそうです。
何故これが日本でも報道価値があるのか、ニュースソースの共同通信もZAKZAKも今のところ、論評がありません。特派員が暇ネタで流しただけなのかもしれませんが、私は中国マスコミと知識階層の現状、そして何より典型的中国人の性質が見えてくる話題だと思いました。

この「北京青年報」の特集記事(中国語)には、それぞれの人物にキャプションが添えられているのですが、ムーアの名前を修飾しているのは「ブッシュ批判の映画を監督、"畏れを知らぬ"作家兼政治評論家」という言葉です。記事の中では、『華氏911』のことだけではなく、2002年3月に出版され、やはりブッシュ政権を批判した"Stupid White Men"(邦題『アホでマヌケなアメリカ白人』)が、30回も増刷を重ねるベストセラーになり、イギリスでは賞まで受賞したことまで紹介し、「アメリカでは恐れを知らぬ政治評論家として称えられている」とまで書いているのです。

多くの日本人なら、この記事を読んだ後、この記事を書いた記者に対して、「あなたの国はどうなの?」「あなたのお仕事は何なの?」って、思わず詰め寄りたくなるのではないでしょうか。
胡錦濤さん批判の映画を監督して、本を出版して、ベストセラーになって、恐れを知らぬ政治評論家と称えられる、なんてこと、中国ではどれ一つとってもあり得ない話なのです。一応、表現者としてはムーアもこの記事の書き手も一緒なワケなのに、他国ではまかり通っていても、自国ではまかり通らない、と言うことを平然と受け容れているのです。しかも、他国では国家の指導者を批判する人間が称えられている、と言う記事なのに、当局による「検閲」はすんなりパスしているわけです。

もちろん、「ブッシュは中国にとって良くない指導者だから、彼を批判する人間はいい奴だ、だからこそ選ばれた」と言う考え方が妥当かもしれません。ムーアのほかに選出された人物の何人かも、「反ブッシュ」的色彩で紹介されているからです。例えば、ブッシュさんについては、ヨーロッパのあるメディアの言として「世界中が望まなかった再選」と紹介していますし、ザルカウィ(さすがに「さん」付けは止めときます)のことは、「フセイン失脚後のイラクのアメリカに対抗する勢力の指導者」と説明しています。

とは言え、「国家指導者の批判」「直接選挙」「民主主義(2004年ノーベル平和賞受賞者ワンガリ・マータイの発言から引用)」「強権発動」などなど、よその国のことは、案外平気で報道されているのが中国の実情なのです。中国と日本に直接関わらない国際ニュースは、日本のマスコミより中国の報道のほうが、全体を網羅しているのではないか、と思うくらいです。

例の私のビジネスパートナー(いわゆる北京の知識階層)とこの話をしました。
「政権や共産党がこうなんじゃないよ、中国人がこうなんだ。」と大笑いされてしまいました。確かに、多くの中国人は自分と関わりの薄い"他人事"にはああだ、こうだ、と積極的に論評します。でも、「じゃあ、自分はどうなの?」と言った途端、口をつぐんだりします。特に北京あたりでは、こういう人が多いです....

ちなみに、「北京青年報」と「光明日報」が選んだ2004年十大国際人物は以下の通りです(括弧内は私の補足です)。

  • 「武器を捨てなかった精神的指導者の排除」 アハマド・ヤシン師 (イスラム原理主義組織ハマスの創始者。2004年3月22日イスラエル軍により殺害)

  • 「難題を強権で乗り切る"危機大統領"」 ウラジーミル・プーチン (ロシア大統領)

  • 「三世代に渡る悲願"直接選挙"」 ハーミド・カルザイ (アフガニスタン初代大統領)

  • 「息子のスキャンダルに悩める評判良き国連事務局長」 コフィー・アナン

  • 「改革目指すも弾劾の憂き目に"平民大統領"の施政は多難」 ノ・ムヒョン (盧武鉉・韓国大統領)

  • 「ブッシュ批判の映画を監督、"畏れを知らぬ"作家兼政治評論家」 マイケル・ムーア (映画「華氏911」監督)

  • 「反テロ大統領の再選は武力を一層強化する」 ジョージ・ウォーカー・ブッシュ (アメリカ合衆国大統領)

  • 「環境保護に努めノーベル賞を受賞した"植林大臣"」 ワンガリ・マータイ (環境活動家、現ケニア環境・天然資源・野生動物省副大臣-彼女に関する日本語記事を集めたブログ-)

  • 「"民族の魂"の中で病死した、誤解されることの多かった憎まれ役」 ヤセル・アラファト (前パレスティナ暫定政府議長)

  • 「爆弾テロと人質殺害、足が不自由な恐怖の大王」 アル・ザルカウィ (アルカイダと繋がりがあると言われるヨルダン人活動家)


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by pandanokuni | 2004-12-27 23:39 | 社会ネタ
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